スペインのサッカーは美しい


 
 
(かの『神の雫』で取り上げられた、スペインの「イゲルエラ(HIGUERUELA)2009」。コストパフォーマンスよく、このヴィンテージは、「コンクルソ・グラン・セレクシオン・デ・カスティーリャ・ラ・マンチャ2009」金賞受賞。生産者:サンタ・キテリア。)

 いよいよWCサッカーも大詰め、スペイン対オランダの決勝戦で幕となる.夜更かしを続けると体内時計が狂って不眠などになる「シンギュラリティ現象」に陥るそうであるが、7/12(月)3:30キックオフのこの試合のテレビ観戦終了で、もとの生活リズムに戻したいものだ.もっとも創作を怠ける口実を失うという問題もあるのだが.
   http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100707/215308/?P=2理化学研究所の上田泰己プロジェクトリーダー)
プレステ3」の「Winning Eleven2009」(KONAMI)では、いつもスペイン代表チームを率いて闘っているので、親近感が大いにある.(ゲームのイニエスタ選手はカワイイが、実物はだいぶオジサン風だ)。その美しいパスサッカーは、同じくあるいはさらに体躯で劣る日本勢の手本・理想となろう。WC初優勝は、スペインサッカーファンが永く待ちわびつづけた栄光だ.昔観劇したガルシア・ロルカ作『老嬢物語(ドニャ・ロシータ)』の、アメリカに渡って30年も戻ってこない婚約者の帰りを待ち続け、老いてしまった女主人公の人生とは、スペイン国民は、今大会で訣別できるのではないか.
 来日したことのあるスペインの思想家ディエス・デル・コラール(Corral)は、その著『ヨーロッパの略奪』(未来社、小島威彦訳、1962年)で、「いかに堕落したとはいえ、今なお本質的な力を失わないキリスト教という軸に沿うてはじめて、ヨーロッパの歴史もまたその世界史における位置も、把握されうるのである」とし、スペインの国家アイデンティティについて述べている.

 オルテガ・イ・ガセットは、まだ若いころ次のように自問している.「ああ、イスパニアとは何ものなのか.この地球の広がりのなかに、無数の人種の真っただなかに、けじめもなき昨日と終りもなき明日のなかに、星のまたたく涯しもない氷のような宇宙の底に、消えうせたイスパニア。一体、このイスパニア、ヨーロッパの精神の岬、ヨーロッパの心のへさきともいうべきこのイスパニアとは、なにものなのか。」この文章が書かれた頃には、まだいかなるヨーロッパ人も、このような言葉で自己の祖国の意味を、問うことはできなかった.むろん、今日ならできよう.いな、今日すべてのヨーロッパ人は、好むと好まざるにかかわらず、自己の歴史的存在の意味を、オルテガと同じような焦燥をもって、全面的に問わざるを得ない.しかも今日ではもはや、自己の国家的存在の狭隘な範囲内においてではなく、全ヨーロッパを包む遥かに広大な連関のなかで、問わねばならないのである。(同書pp.135〜136)


⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町の「ペチュニア(Petunia)に止まったクロアゲハ」。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆