「国立民族学博物館」と仮面展



 
 

 国立民族学博物館初代館長だった梅棹忠夫氏が逝去とのこと。『文明の生態史観』(中公文庫)の壮大な仮説を思い起しつつ、ご冥福を祈りたい.
 国立民族学博物館所蔵の仮面の展示に2度ほど出向いている.1988年1月、同館開設10周年記念の巡回展「神々のかたち—仮面と神像展」が、わが千葉県船橋市の西武美術館(いまは閉館)で催された.収集・所蔵資料のなかから200点の仮面と神像が展示された.地域は、オセアニア、アフリカ、アジア、アメリカの4地域にわたっている。カタログの巻頭言「ごあいさつ」で、「それぞれの民族の固有の美意識や造形の精神と技術、祖霊観やカミ概念をもうかがいしる貴重な資料ばかりであります。いわば、民族芸術の精髄であります」と梅棹氏は述べている.カタログで、たまたま開いた頁のメキシコのサソリやカエルやクモを象った仮面などを見ていると、心が和んでくる.いまにしてとてもすてきな展示であったことがわかる.
 1990年、アフリカの仮面のみを約230点展示した「赤道アフリカの仮面展」が企画展示され、5月26日大阪の吹田市千里まで日帰りの行程で見に行った.これは同館としては第一回の企画展にあたっている.19:04新大阪発の「ひかり260号」で戻ってきたので、タフなビジネスマン並みの行動ではあった.売店にて、子安貝を使った仮面(写真)を1万円で購入してきた.いまもわが家の居間の壁にぶら下げられている.
 このときのカタログ(総138頁・1990年3/12発行)の「序」において、梅棹氏は、「国立民族学博物館の活動は、研究、展示、そして資料管理の三つの分野からなる」とし、「本書の刊行によって、本館の活動における三分野の出版がでそろったことになる.今後はこのような展示に関するあたらしいタイプの出版が数おおくおこなわれることであろう.その展開をおおいに期待している」と結んでいる.以降おそらく多くの出版活動の成果が蓄積されているのだろう.こちらの本もあらためて頁を括って、眼を楽しませているところである.
 
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のムクゲ木槿)。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆