「深沢幸雄—銅版画の魅力」展鑑賞

 
 昨日7/12(火)は、千葉県佐倉市佐倉市立美術館で7/18(月)まで開催中の収蔵作品展「深沢幸雄—銅版画の魅力」を観てきた。ここの美術館を訪問したのは、1997(平成9)年、生誕100年記念「ポール・デルボー展」以来である。美術館を会場にした深沢幸雄展としては、1991年山梨県立美術館での大回顧展以来の展示鑑賞の機会であった。
 いかにも田舎の駅といった印象の京成佐倉駅前の道をしばらく歩いて、なだらかな坂道の突き当たりに瀟洒で魅力的な建物が眼に映る。それが佐倉市立美術館。展示は2F、心躍らせながら、展示室に入った。文藝雑誌や小説本の表紙ですでに馴染んでいる作品の多くに出会い、感動を新たにした。わが所蔵作品2作のうち、「いたずら天使」が展示されていて、一瞬まるで家具の一つが晒されているような〈気恥ずかしさ〉を覚えたのであった。銅版画であるからとうぜんのことではある。
 銅版画の技法については、かつて調べたこともあったが忘れている。鉱物質の触感と内面のドラマが交錯し独特の味わいを生んでいる。戦後の出発点での、深沢幸雄の作品について、亡き美術評論家針生一郎氏は、1995年同館「深沢幸雄展」目録の解説で、「シュルレアリスムを咀嚼して、人体をデフォルメ解体しながら、社会にかかわる自己の内面を対象化するのは」同時代の他の作家たちに共通する傾向であったが、深沢幸雄は「銅版画の硬質でクールな材質感をとおして、即物的なオブジェのからみあうイメージとしてそれをみごとに実現したのである」と評している。1963年のメキシコ滞在を経由して、色彩豊かでシンプルなプリミティブの作風を経て、以降、人間省察の深みとともに希望や、温かいユーモアも加わって、素人的には眺める愉しさがいっそう増している感じである。
(1997年ポール・デルボー展チケット)


(わが所蔵作品1:いたずら天使)
(わが所蔵作品2:森の底)

1995年佐倉市立美術館深沢幸雄 魂の彷徨:1955〜1995」展目録)