ケラリーノ・サンドロヴィッチ作、演出『ドクター・ホフマンのサナトリウム』観劇

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  11/19(火)夜、横浜みなとみらい線日本大通り駅下車の KAAT(神奈川芸術劇場)にて、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出『ドクター・ホフマンのサナトリウム』を観劇した。2幕ながら休憩15分を含めて3時間30分の大作。千葉県船橋市の拙宅に帰ったときは、途中(パンケーキ購入の為)ローソンに立ち寄ったこともあり、12時を過ぎていた。しかし退屈するところもなく観られたので、意外と疲労感は少なかった。

 当日録画撮影が入るとのことで、メールで連絡あり、座席を変更したいとのこと、受付でその旨伝えてほしいと。持っているチケットよりも前の席を保証するので安心されたいとの趣旨であった。着いて受付にさっそく伝えると、暫時待ってからたしかに前の席のチケットを貰えて、しかも希望通り通路側端の席、よかった。有名俳優陣が出ていて人気のKERA氏演出の舞台、とうぜんチケット代が高い(S席9,500円)ので、空席(2F・3Fなどガラガラ)があり助かった。ホール内に売店はあるが、飲み物&ケーキ類のみで軽食類は置いてないとの情報を得ていて、日本大通り駅構内地下のファミリーマートでジューシーハムサンドを仕入れ、カフェコーナーでいただいた。美味しかった!カフカ、いやパンがふかふかで食感もなかなか。ペロリーノ・サンドウィッチとでも言うべき夕食となった。それにしても購入した公演プログラムが半分袋とじ状態で、隣の台に用意されたペーパーナイフで切り開けとの注文、壇蜜さん(ご結婚おめでとう)のフルヌード写真の袋とじでもあるまいし、誰がそこでやるかと思ったら、熱心に切り開いている男性客もいた。慣れている感じ、でもなかったか。

 さて今回のKERA氏の作品は、カフカにはこれまで(死後)公開されたことのない第4の長篇小説が存在し(むろん虚構)、その原稿をたまたま祖母の部屋で発見した男ブロッホ渡辺いっけい)が、借金の返済のため出版社に買い取って貰いに行くというのが、(舞台上の)現実=いまで、その長篇小説の主人公がカフカ作品にはない女性主人公(やはり頭文字Kの)カーヤ(多部未華子)で婚約者ラバン(瀬戸康史)と列車の旅に出るが、はぐれてしまい、彼を探して戦場にまで赴く。死んだとの情報で、まるで『審判』の主人公のように、突然に二人の軍人の引率同行で旅を続け、戦場の戦闘や処罰の光景などを目撃させられる。ついにどこにも辿り着けないところは『城』の展開である。その〈本筋〉の合間に、いまが挿入され、友人(大倉孝二)とともにブロッホは祖母が少女のころ、紛失した人形に代わって手紙を書いてくれたカフカを求めて、とうとうタイムスリップして、ドクター・ホフマンのサナトリウムで最期を迎えたカフカ瀬戸康史)と恋人のドーラ(多部未華子)に出会う、という多層な構造となっている。つまり荘周の「胡蝶の夢」の世界と重なっているわけである。

 どこかの場面で、こまの話がさりげなく語られるが、これはむろん掌篇「こま」を意識したものであろう。面白い。最後に再び列車の場面。ラバンが停車中買い物に下車しなければ、二人はまた違った人生の冒険あるいは別な悲劇に遭遇したかもしれない、と想像させて幕。虚構の不可思議さと愉悦とを暗示して、まさに演劇的終わり方、多部ちゃんお疲れさま。NHKドラマ『これは経費で落ちません!』の森若さんの生の声が聴けて、満足の長丁場ではあった。

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f:id:simmel20:20191122163348j:plain(「東京新聞」2016年9/22 )

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の舞台では、2006年2月のシアターコクーンでの、『労働者M 』の舞台録画DVD(2枚組)を所有しているが、退屈で最後まで観ていない。キャスティングは申し分ない。あるいは傑作なのかもしれない。


【『これは経費で落ちません!』】

 NHKの連続ドラマ『これは経費で落ちません!』(毎週金曜日夜10:00〜)は、同時間帯TBSの連続ドラマ『凪のお暇』を初回から観ているので、後から放送のこちらはNHKオンデマンドで楽しんでいる。堅物の経理部員森若沙名子を多部未華子が好演している。「ウサギを追うな」という言葉で、他人の問題に深く関わるなとの信条をもっていながら、不正の書類操作を追及しつつ結局は介入してしまう一話完結スタイルのドラマ。介入しても最後には不正をした社員の納得が得られる優しい決着に導くところが、ほんわかして悪くない。脇役陣も揃っているが、隣の席の同僚経理部員佐々木真夕を演じる伊藤沙莉がいい。

 森若さんは経理に妥協をしないが、怪しい差し入れのスペイン産のハムをこっそり素早く口に入れてしまうような、ちゃっかりしたところもあって魅力的に描かれている。多部未華子にぴったりのハマリ役である。

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