二人のオランダ(出身)女優:マルーシュカ・デートメルスとカリス・ファン・ハウテン

 先日映画公開およびWOWOW放送いずれでも見逃していた、ポール・バーホーベン(Paul Verhoeven)監督の『ブラックブック(BLACK BOOK)』(2006年)をWOWOWメンバーズデマンドで観ることができた。旧いPCをiMac High Sierraに買い換えたので、思う存分WOWOWの映画が愉しめそう。
 家族を惨殺されて、オランダの対ナチレジスタンス運動に参加した、ユダヤ人女性歌手ラヘル(偽名エリス)が、ナチのムンツェ大尉との悲恋を軸に、有能なレジスタント兵士で医師、じつは残虐なナチのフランケン中尉と通じていた裏切り者のハンス・アッカーマンスへの復讐を果たすまでの物語。戦争映画の恐怖感とサスペンス映画の緊迫感をともに感じさせる作品、面白かった。最後近くで、公証人がラヘルに残したブラック・ブックに正体が明かされていることを知ったハンス・アッカーマンスは、ムンツェ銃殺のことを知らされて気絶し倒れたラヘルを介抱すると見せてインシュリンの大量注射を打った。急性の低血糖で死に至らせようとしたのである。意識を取り戻したラヘルは、必死にテーブルに置かれていたチョコレートを口に放り込んだ。✽ちなみにこちらは糖尿病ではない。8/24血液検査で、空腹時血糖値98(基準値110未満)、HbA1c値5.1(基準値6.2以下)
 https://medicalnote.jp/contents/151020-000024-AYTQSP(「低血糖の症状が発生したときの応急処置」)
 http://www.med.or.jp/anzen/manual/pdf/etc_B.pdf(「インスリン製剤が関係したインシデント,アクシデント事例」)
 2階のバルコニーから飛び降りて、ラヘルは生還に成功、ハンス・アッカーマンスの密告によって息子をナチに殺されたレジスタンスのリーダー、ヘルベン・カイパースとともに復讐を遂げるのであった。パルチザンのスパイになることを決意し裸身の手入れをしているラヘルに、「君は糖尿病なのか?」とハンス・アッカーマンスが訊き、またムンツェ大尉が彼の収集趣味の切手を持ってナチ本部を訪れたラヘルに、「テーブルのチョコレートを食べなさい」と勧める二つの場面は、インシュリン注射殺人未遂の伏線でもあり、ラヘル、ムンツェ大尉、ハンス・アッカーマンスの奇妙な三角関係を暗示もしていて秀逸である。
 このブラックブックの真実が世に明かされなければ(歴史的事実ではそうであった)、ハンス・アッカーマンスは、レジスタンスの英雄として民衆から称えられ続けていただろう。戦争そのものとは別の怖ろしさを想像させるのである。

 (映画プログラム:黒の紙ケース収納)





 さて、ユダヤ人女性ラヘル(偽名エリス)を演じたカリス・ファン・ハウテン(Carice van Hauten)と同じ、オランダ出身女優によるユダヤ人女性パルチザン映画では、マルーシュカ・デートメルス(Maruschka Detmers)主演の、メナハム・ゴーラン(Menahem Golan )監督『ハンナ・セネシュ(HANNA'S WAR )』がある。この作品については、ブログ(2016年11/30記)に記載している。
 
▼ このゲバラに匹敵する、実在した闘う人間の激情と哀しみを描いた映画として、メナハム・ゴーラン(Menahem Golan )監督の『ハンナ・セネシュ(HANNA'S WAR )』を挙げたい。この作品は、映画館ではなくVHSビデオで観ている。ナチズムに果敢に抵抗した、ハンガリーユダヤ人女性ハンナ・セネシュを、オランダ出身のマルーシュカ・デートメルス(Maruschka Detmers)が演じている。わが贔屓の女優である。ハンナは、ついにドイツ軍に捕縛され、ハンガリー軍事法廷で死刑宣告が出されてしまう。雪の処刑の庭で、目隠しを着けることを敢然と拒否してハンナは銃弾に倒れるのである。主演の女優を選ぶオーディションの場で、軍事法廷でのハンナの演説をマルーシュカ・デートメルスが涙を流しながら語ると、感動して監督のメナハム・ゴーランはもらい泣きしたとのことである。まさに、ハンナがこの女優に憑依していたのである。

 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20120430/1335773687(『「青」をめぐって:2012年4/30 』)
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20110414/1302760815(「Merci Beaucoup Birkin!:2011年4/14」)
(映画プログラム)