映画のなかの闘う男と女






 リチャード・フライシャー(Richard Fleischer)監督の『ゲバラ!(CHE! )』は、フィデル・カストロとともにキューバ革命を闘ったチェ・ゲバラが、キューバを離れて対ボリビア政府闘争で処刑死するまでを描いている。1969年日比谷映画劇場で観ている。チェ・ゲバラオマー・シャリフOmar Sharif )、フィデル・カストロジャック・パランス(Jack Palance )が演じている。規律を厳格に守らせる、映像のなかのゲバラの行動に戦慄した記憶がある。二人の美人女優(リンダ・マーシュ&バーバラ・ルナ)も出演していて、ただの殺伐とした革命映画ではなかった。



 このゲバラに匹敵する、実在した闘う人間の激情と哀しみを描いた映画として、メナハム・ゴーラン(Menahem Golan )監督の『ハンナ・セネシュ(HANNA'S WAR )』を挙げたい。この作品は、映画館ではなくVHSビデオで観ている。ナチズムに果敢に抵抗した、ハンガリーユダヤ人女性ハンナ・セネシュを、オランダ出身のマルーシュカ・デートメルス(Maruschka Detmers)が演じている。わが贔屓の女優である。ハンナは、ついにドイツ軍に捕縛され、ハンガリー軍事法廷で死刑宣告が出されてしまう。雪の処刑の庭で、目隠しを着けることを敢然と拒否してハンナは銃弾に倒れるのである。主演の女優を選ぶオーディションの場で、軍事法廷でのハンナの演説をマルーシュカ・デートメルスが涙を流しながら語ると、感動して監督のメナハム・ゴーランはもらい泣きしたとのことである。まさに、ハンナがこの女優に憑依していたのである。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120430/1335773687(『「青」をめぐって:2012年4/30 』)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110414/1302760815(「Merci Beaucoup Birkin!:2011年4/14」)