『週刊文春』4/19号掲載、池澤夏樹「私の読書日記」は面白い


週刊文春』4/19号掲載、池澤夏樹氏の「私の読書日記」では、『民族問題』(文春新書)、『「日本の伝統」の正体』(柏書房)の読書日記に続いて、『久保田万太郎の履歴書』(大高郁子絵・編、河出書房新社)を紹介している。なお、こちらはいずれも未読で、かつ購入の意図もない。題して「民族、伝統、久保田万太郎」。『民族問題』について、「いやしくも新聞を読んでいる者ならば、国際面に目を留める者ならば、必読の一冊」と推しているのは、文藝春秋を〈忖度〉してのことだろうか。生来の天の邪鬼もあり個人的に、だいたい「国民必読」などと書くものはスルーしている。
 二冊目の『「日本の伝統」の正体』の紹介が面白い。

「一般に、人は自分の頭で考えることをやめると、世間とかかわる時、まるで素っ裸で往来に出るようで心細い。そんな時、『権威』『ブランド』『伝統』に頼ります」という結論もまことに的を射ている。

 そのあと、久保田万太郎を扱った書物の紹介である。巧みである。(ぼくはこの人がずいぶん好きなのだ)と打ち明けている。いまの日本人の所作の中に、身体化された〈伝統〉がどれだけ残っているのだろうか? 久保田万太郎の俳句と舞台は、それを顧みる機会を与えてくれるだろう。

……演劇評論家渡辺保氏によれば、かつての文学座では、久保田万太郎の指導のもと、日常語を演劇の言語として語る訓練がなされていたので、断片化された場面ごとに語りの魅力が散りばめられた、この宮本研の作品(※『美しきものの伝説』)を舞台化するに適していたとのことである(NHK・BS「昭和演劇全集」での高泉淳子さんとの対談で)。……下記2011年2/27ブログ記事
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110227/1298819466(「コンヴィチュニー演出の『サロメ』:2011年2/27 」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20140501/1398912540(「蜷川幸雄演出『にごり江』は観ている:2014年5/1 」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20160602/1464846107(「久保田万太郎:2016年6/2 」)