劇作家サム・シェパード




 劇作家サム・シェパード(Sam Shepard)作品の舞台は、ピュリツァー賞受賞の『埋められた子供』(シャロン・オット演出)一作のみ観ている。1983年5月、ミルウォーキー・レパートリー・シアターの日本公演の舞台であった。新宿シアターアプルにて、テネシー・ウィリアムズ(Tennessee Williams)作『ガラスの動物園』(ジョン・ディロン演出)との2公演で、どちらも観劇している。公演パンフレットに「サム・シェパード劇作を語る」という題で、過去発表されたエッセイからの抜粋が掲載されている。いま読んで面白いことばに遭遇した。紹介しておきたい。
……私が戯曲を書き始めた理由は、子供の頃経験したのと同じ様な「遊戯(プレイ)」の興奮を、大人の生活の中にも拡げて行きたいという願いからであった。そうではないか、もし、「演技(プレイ)する」ことがお仕着せの骨折り仕事になってしまうというのなら、何故プレイと呼べるであろうか?……
……神話は、一時(いっとき)にすべてのものに、特に、情感に語りかける。今、私は神話と言ったが、それは必ずしも、それが伝統的にいわれて来た意味だけで言ったのではなく、ある種の神秘感覚のことを言ってるのだ。ある一人の登場人物というものは、私には、多様な神秘性の合成物の如きものである。彼は未知数である。もし彼がそうでないと言うなら、彼を描く仕事とは、丁度、番号を打たれた囲みを順々に色付けして行く作業と何ら変りのないものとなってしまう。……