『人物研究』誌38号


『人物研究』誌38号の恵贈にあずかった。目次を見ると、連載評伝「板谷波山と田畑文士村」が目についた。1953(昭和53)年、波山が陶芸家としてははじめて文化勲章を受章、その折の家族写真が載っている。荒川正明著『板谷波山の生涯』に掲載されている写真の一つで、「皇居での受章式から帰宅後、新居前で羽織袴の正装に勲章をかけた波山と、背広姿の石田市松を中心に、和服の夫人や洋装の子息、孫たちと写した写真も掲載されている」との、その写真(同誌p.34)の「子息」とは、わが中学の国語古文の恩師、故板谷菊男先生である。先生には、『天狗童子』という古典(古今著聞集)にインスパイアされて作られた短篇集の著作がある。なぜか、あるはずの書庫の棚に見つからない。板谷波山の作品は、かつて出光美術館の「板谷波山展」で観ている。
「編集後記」で編集人が、引退した歌手ちあきなおみについて触れていて、「彼女の歌唱を聴くと人の世の諸相が見えてきて、空の盃に一杯また一杯と注ぎ累ね、やめたタバコが無性に欲しくなるのです」と書いている。なるほど。