事実認識をしっかり

◯カイロ発の7/3付時事通信社記事に、『エジプトにあるイスラムスンニ派の最高権威機関アズハルは3日、声明を出し、バングラデシュダッカで起きた飲食店襲撃テロ事件を「凶悪な犯罪行為だ」と強く非難した』とある。この記事について、池内恵(さとし)氏が、Pickerとしてコメント(7/4付)している。同氏Facebook7/4記事にも転載されている。スンニ派には最高機関なるものは存在せず、「イスラムスンニ派の最高権威機関アズハル」というのは、あくまでも「日本の報道で勝手につけている独自のランキング」とのこと。
……スンニ派は最高権威機関がない仕組みなので、テロの宗教的根拠を否定できない。スンニ派の場合、各国の政権に近い学者が、その国で有力な宗教学院で要職に取り立てられるだけなので、その説に拘束力がない。政権を支持する人は従うが、支持しない人は従わない。それだけ。
ここが各地で自発的に勝手にテロをやる人を止められない、現在の問題の根元になっているということを読者が理解することを妨げる、困った報道です。……
 https://newspicks.com/news/1644244/(「ダッカのテロ強く非難=イスラム権威」)
◯「産經ニュース」の【文芸時評】で、石原千秋氏が、漱石の『こころ』をめぐって書いている。若松英輔氏が、『こころ』を論じるに、岩波の『漱石全集』を用いるのは、漱石全集編集部にいた秋山豊の「漱石はほとんど校正をしない。作品もほとんど見直すことがない」という言葉を根拠としていることに言及し、この事実はほぼないとしている。
……漱石が『三四郎』の野々宮の研究室の記述を寺田寅彦のアドバイスで書き直したのは有名だし、『行人』の初出にかなり朱を入れた切り抜き帳は文学アルバムの類(たぐ)いで誰でも確認できる。これだけなら「きちんと自分で調べなさい」で終わりだが、6月号では、だから「これまで語られてきた『こころ』をめぐる論説をひとたび横において、私たちも漱石から直接原稿を預かった者のようにこの作品を読んでよいのである」ときた。手抜きの言い訳ではないか。しかも、これほど珍妙な理屈はめったにあるものではない。……
 http://www.sankei.com/life/news/160626/lif1606260023-n1.html
 (「産経ニュース:心の使い方を学ぶ 早稲田大学教授・石原千秋 」)
 http://collegio.jp/?p=720(「秋山豊という生き方」)