たまには英語でイスラームを考える

 昨日1/20(火)発売の『イスラーム国の衝撃』(文春文庫)の著者池内恵(さとし)氏が、Facebook(1/13記)で書いている。
……ものすごく簡潔に、最低限認識しておかなければならないことを書いてある。『ニューヨーカー』で中東問題を報じてきた記者による論説。英語を読めると、世界の中で本当にモノを考えている人たちの考えに接する機会が何十倍・何百倍・何千倍・・・になる。だから、英語は頑張って読みましょう。グローバル人材ってそういう地道なことだよ。/まあ、「俺年取ったからもうもの考えたくないよ、英語とかよくわかんないし・・・」という世代が多数派になっていることが日本の弱点。……
 https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202506333818650
            (「池内恵Facebook1/13」)
 辞書を引き引きなんとか読解。大いに勉強になった。
 http://www.newyorker.com/news/news-desk/blame-for-charlie-hebdo-murders(「The Blame for the Charlie Hebdo Murders」)
 1/7パリの「シャルリー・エブド」社襲撃事件の背景・原因について、経済的困窮やら社会的孤立化やら道徳的荒廃などから生まれた、ニヒリスティックな暴力の一般的な風潮の一コマとして捉えることを否定している。そして、テロの責任を風刺漫画そのものに限定する発想も退けている。
……Least of all should they be “understood” as reactions to disrespect for religion on the part of irresponsible cartoonists.……
 このあたりは、立ち止まらされる指摘である。過去のテロからの一連の連鎖の中にある殺人事件であり、根本にイデオロギーの問題が存在するということである。
……They are only the latest blows delivered by an ideology that has sought to achieve power through terror for decades. It’s the same ideology that sent Salman Rushdie into hiding for a decade under a death sentence for writing a novel, then killed his Japanese translator and tried to kill his Italian translator and Norwegian publisher. The ideology that murdered three thousand people in the U.S. on September 11, 2001. The one that butchered Theo van Gogh in the streets of Amsterdam, in 2004, for making a film. The one that has brought mass rape and slaughter to the cities and deserts of Syria and Iraq. That massacred a hundred and thirty-two children and thirteen adults in a school in Peshawar last month. That regularly kills so many Nigerians, especially young ones, that hardly anyone pays attention.
 ここに挙げられているテオ・ファン・ゴッホ(Theo van Gogh)という人物およびその殺害事件について不覚にも知らなかったので、調べてみた。アムステルダムで殺害された直接のきっかけとなった映画とは、「Submission(服従=Islam)」。ソマリア出身の反イスラーム主義の女性政治家アヤーン・ヒルシ・アリの脚本で、イスラームにおける女性の抑圧と暴力を訴えた作品。この映画の作品としての価値はあまり感じられず、ムスリムからはとうぜん反論があるだろう。しかし非イスラームの側でフェミニズムの立場に立って、いっぽうで宗教的寛容のみを主張するのはどうだろうか。
 http://akaitaro.com/text/vangohho.html(「ヴァン・ゴッホの殺害が象徴する世界的問題」)
 https://www.youtube.com/watch?v=6rS8FJyX3gs(「Submission」)
 この『ニューヨーカー』記事では、虐殺について、「slaughter」「massacre」「carnage」の三つの語を使っている。なお英和辞典によれば「ヘロデ王による幼児大虐殺」は、「The Massacre of the Innocents」となる。
 さて本日『イスラーム国の衝撃』(文春文庫)購入。最初から興味深い指摘があり、以後のスリリングな展開を期待したい。各国の政権や政権に近い多くの著名・有力ウラマーイスラーム学者)は、いずれもバグダーディー(※「イスラーム国」の最高指導者)のカリフ就任の承認を拒否していて、一般のムスリムも「イスラーム国」の過酷な統治を歓迎する者が現状で多数を占めているとは考えにくいとし、
……しかし各国の政権の統治が不正義とみなされている状況がある限り、またそれらの政権に追随して宗教解釈を融通無碍に切り替えるウラマーの信頼性に疑いを持つ市民がいる限り、多数派ではないにしても社会の中の一定数が「イスラーム国」に賛同・共鳴していく可能性は十分にある。この運動が潰えても、同様の運動が今後も各地で生じることが予想される。……(同書p.20)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20141114/1415951864(「なるほどのイスラーム観:2011年11/14」)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

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