「シルバー民主主義」の克服






 5/21(土)は、船橋市三山の二宮神社にて、長男夫婦とともに2/2誕生のAちゃんのお宮参りの儀を済ませた。孫の長男のKくんの場合は、福岡県太宰府天満宮で行なった。この二宮神社は、櫛稻田比賣命(くしなだひめのみこと)が祭神として合祀されている。小満の節気にふさわしく、樹々鬱蒼として古社の風格があり、訪れる若い女性も少なくなかった。
 http://www.ninomiya-jinja.jp/index.html(「船橋市二宮神社」)
 新京成東葉高速習志野駅近くの魚つぐという割烹で会食。鮪中トロ刺身を肴に生ビールを呑んでから、うな重。淡白な味付けで美味しかった。店の雰囲気は活気があり、このあたりで会食するにはいちばんではないだろうか。
 http://tabelog.com/chiba/A1202/A120201/12014560/(「食べログ:魚つぐ」)

 八代尚宏日本経済研究センター理事長の『シルバー民主主義』(中公新書)は、子供・孫世代の将来を展望する上で考えさせられる、問題提起の書である。「日本は半世紀以内に人口全体の四割が六五歳以上となる、世界でもトップクラスの高齢化社会を迎える。そのなかで、シルバー民主主義の弊害はいっそう大きなものとなる」との危惧を前提として、その有効な処方箋を提示したものである。シルバー民主主義とは、高齢者の既得権を守ろうとする政治のあり方で、日本の場合、1)社会保障制度や企業の慣行において高齢者を優先することによる世代間格差の広がり、2)借金に依存した日本の社会保障の現状を放置する近視眼的な政策、3)過去の成功体験に縛られ、新たな制度・慣行へ改革することに対する消極的な姿勢と先送り志向の強まり、などが特徴である。
 人口割合が増加し続けるのみならず、高齢者の選挙の時の投票率の高さが、その影響力を強める結果を生んでいる。そこで選挙方法について、八代尚宏氏は、選挙権年齢を引き下げたのであれば、被選挙権年齢も引き下げて若年層の意見を代弁する候補者が出てくるようにする、投票を義務化して若年層の政治への関心を育てる、議会の議席数を世代別人口に応じて割り振ったり平均余命の長い若年層ほど一票の価値を高めたりして、高齢者の投票権を制限する、など改革案を紹介している。最後の高齢者の投票権を制限する改革案は、高齢者の賛同を得られまい。著者は、高齢者の理解が得られそうな手だてを提示している。
……シルバー民主主義の克服は、長寿化が進む先進国に共通した課題である。税金や社会保険料を負担する多数者の合意なくして、増税に結びつく社会保障支出を拡大させないという「納税者民主主義」は、自らの負担額よりも社会保障からの受給額の方が多い高齢者の増加で脅かされている。
 これに対して、高齢者の投票権を制限すべきという説が現実性を欠くとすれば、残された可能性は高齢者の納得を得ることである。第一に、現行の社会保障制度は、多くの高齢者の意図に反して、子どもや孫の世代に膨大な借金を残す仕組みとなっていることを伝えるべきである。第二に、「借金に依存した社会保障」には限界があり、近い将来に大幅な社会保障費が削減されるリスクを負っていることへの理解を得ることである。これを政治の場で明確に示すことができれば、日本の高齢者が近視眼的で、自らの利益しか眼中にないと考えている与野党の政治家へのアピールにもなる。……(pp.29~30)
 高齢者間の所得・資産格差の大きさを無視した、一律の高齢者対策が間違っていることにも気づかされた。そもそも「日本の所得格差の高まりは、人口の高齢化から生じる見かけ上の現象」(大竹理論)なのだそうである。なるほど。
……シルバー民主主義の基本的な特徴のひとつは、低所得高齢者の救済を名目に、勤労世代からの所得移転をできる限り拡大させようとするところにある。しかし高齢者層は、他の年齢層と比べてもっとも所得・資産格差の大きな集団であり、「高齢者が一律に貧しい」という見方は、「高齢者は一律に豊か」という認識と同様に誤っている。高齢者間の大きな所得格差を共通認識とすれば、「低年金受給者の生活を守るため、年金給付の平均水準を引き上げる」という、シルバー民主主義を正当化する最大の前提が崩れる。……(p.40)