葉山修平と室生犀星

 室生犀星学会会長でもある作家葉山修平さんの近刊『処女出版—そして室生犀星』(龍書房)が上梓された。文藝誌『雲』連載の小説を単行本にしたものである。帯に『室生犀星の葉書に端を発した作品— 比叡山被差別部落との葛藤を描いた「天皇の村」の出版をめぐって著者周辺の詩人、作家、編集者たち、そして晩年の室生犀星のしられざる素顔がいきいきと描かれる。』とある。この「天皇の村」は、『異形の群』の題名で、東西五月社から「長篇小説叢書」の一冊として1959(昭和34)年に刊行されている。
 この作品をめぐって、作者と被差別部落出身者との間で「異形の群」論争が生起したことは、長谷川泉編『近代文学論争事典』(至文堂・1962年)に詳しい。なお原題の『天皇の村』に戻して、房総文芸選集『葉山修平集』(東銀座出版社発売)に収録されている。


葉山修平集―天皇の村 (房総文芸選集)

葉山修平集―天皇の村 (房総文芸選集)