今年の司法試験合格者数は?



 今年の司法試験合格発表の日9/10(火)が迫ってきた。政府の法曹養成制度検討会議は、7月に年3000人程度の合格者数目標撤回を決めている。その方向で今年の合格者数がどう動くのか、部外者にも大いに関心が生まれるのである。
週刊エコノミスト』8/6号は、「食える弁護士・食えない弁護士」と題する弁護士関係の特集記事を組んでいる。トップ記事で弁護士の就職状況について触れている。 
……日本弁護士連合会のまとめによると、12年に司法修習を終えた2080人のうち、6月3日時点で78人がまだ弁護士登録をしていない。そのうち21人は企業や官庁への就職者、6人は登録見込みだが、10人が就職活動中、41人は理由不明などという。……
 未定者の数そのものは、案外多くないようだ。職業活動としての中身が問題となっているのであろう。
……このように、弁護士業界で就職難や低所得者増がクローズアップされるようになった背景には、司法制度改革による弁護士の急増が要因とされている。同改革は、訴訟数増や役所・企業への弁護士進出が増え、それに伴い弁護士のニーズも高まると想定し、司法試験合格者を大幅に増やす計画を掲げた。だが、「合格者が急増する一方、訴訟は思うように増えなかった」と、かつて内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員として法科大学院制度の設計に携わったM弁護士は話す。裁判所が新たに受理した訴訟などの事件数は11年には406万件で、03年の612万件から大きく落ち込んでいる。……
 この問題に対して、
……会社法で有名なN弁護士は、「仕事がないから弁護士の数を減らせ、という議論はおかしい。食えないなら、食えるようになるまで努力すべき。努力すれば、普通に生活できるぐらいにはなれるはずだ」と話す。(略)
 実際、弁護士の中では依然、年収数億円稼ぐ人も多い。こうした「食える弁護士」にとっては、「努力不足」という見方も当然出るだろう。食える弁護士と、食えない弁護士の二極化は、進む一方だ。……
「ヒマワリのバッジ」が生涯保証の特別の資格ではなくなったと、この記事は結んでいる。

 岡田和樹・斎藤浩両弁護士共著『誰が法曹業界をダメにしたのか』(中公新書ラグレ)では、弁護士の数が増えるとその地位が低下するとの議論は不思議であるとし、
……弁護士人口を抑えようという人たちが口にするのは、「新人が就職難に陥っている」とか、「若手弁護士が喰えなくなっている」「新人弁護士の学力低下」とかいうことである。
 しかし、一部の新人弁護士の「就職難」や「学力低下」などは、きわめて例外的であったり、特段問題にするに値しなかったりする事象であって、これを理由に法曹人口問題を論ずるのは、愚かとしか言いようがない。……(同書pp.35~36)
「喰えなくなった」ことについては、弁護士の「取り扱い商品」である土地や株などの資産価格が下がれば、法律事務所の経営が苦しくなるのは避けがたいとし、
……その意味で、法律事務所の経営が苦しいのは、世間の商店主や中小企業、労働者が苦しんでいるのと同じことで、弁護士だけが苦しんでいるわけではない。新しく登録した弁護士に仕事がないのは、多くの若者が大学を出ても正社員になれずに、派遣やパートといった非正規雇用に就かざるを得ないのと同じである。……(同書p.47)
 アメリカのいわゆる「ambulance chaser(救急車の追っかけ弁護士)」にはならずとも、弁護士が積極的に訴訟を掘り起こすことが市民の利益になる場合もあること、国境を越えた活動が求められてくることなどを、この書は指摘している。

 
 ともあれ9/10発表の合格者数には注目したい。日弁連の合格者数1500人の提言を参考にすれば、競馬予想で〈鍛えた〉勘では、1700〜1800人あたりか。
 http://kuronekonotsubuyaki.blog.fc2.com/blog-entry-863.html(「書評:アメリカ・ロースクールの凋落」)
 http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-728.html(『司法改革の「本音」』)
 http://t-m-lawyer.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-8ba1.html(「弁護士過剰の弊害」)
 http://www.veritas-law.jp/newsdetail.cgi?code=20130908224941(「法曹志願者からの相談」)
 http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20130909/1378684038(『「法曹不人気」報道は正当か?』)
 http://toyokeizai.net/articles/-/15443(「弁護士業界の最強集団”ブル弁”の生態とは?」)