「若林圭子・博品館リサイタル」鑑賞



 昨日11/14(火)の夜は東京銀座博品館劇場にて、「若林圭子・博品館リサイタルVol.10」を聴いた。11月のわが年中行事となっている。昨年の「Vol.9」では、若林さん、喉の不調で声がほとんど出なかった。今年のリサイタルのタイトルは「Quelle Voix(どんな声で)」、心配は不要であった。力強い声が戻り、聴く者は魂からの表現に身をゆだね陶酔しているだけでよかった。H.マンシーニの「ひまわり」にはじまり、レオ・フェレの「最高だ」で幕を下ろした歌唱は、人生の悲しみ、切なさ、はかなさを深いところから訴え、また情念の燃焼と生きる悦びをも表わして感動を与えてくれた。ピアノ、パーカッション、ベース、ヴァイオリンの音もすばらしく、聴衆が一夜のみ共有する感情のうねりを導いてくれた。
 個人的には、いちばん好きなバルバラの「ナントの街に雨が降る」はむろん、昨晩は、C.アズナブールの「ラ・ボェーム」、G.ベコーの「つばめ」、それに松本青樹の「道成寺伝説」にとくに心を激しく揺さぶられた。連れ合いは、R.パウルスの「百万本のバラ」がよかったとのこと。アンコールは中島みゆきの「時代」。何もかもが〈どん底〉状態の今年の晩秋、来年への希望らしきものをほのかに示して、みごとな幕切れの歌唱となった。
 フランス語に堪能な若林さんの「パリの空の下」(J.ドレジャック作詞・H.ジロー作曲)のフランス語のままの歌を聴いて、昔少年時代家で初めて蓄音機から聞こえてきた曲がこの曲であったことを、またまた懐かしく思い出した。




⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の、上スプレー菊(Spray mum)、下ポンポン咲きの小菊。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆