ホンモノの戦中派はすごい

 この23日に満95歳の誕生日を迎えたという、作家・詩人伊藤桂一氏が、本日の「東京(反原発)新聞」夕刊紙上に、「九十五歳の転居風景」と題してエッセイを載せている。最近のこの新聞の記事ではめずらしく、全文読むことになった。伊藤氏は、今度永く住んできた東京の私宅から、神戸の老人ホームへ転居することにしたそうである。
……老人ホームは十五年契約で、前納金は私の百八歳まで。私は「それまでに死ねばそれでいいさ。生きている限り最善をつくせばね」という戦場での死生観をしっかり持っている。……
 老人ホームでただちに『前向きに生きて百歳まで』という表題のエッセイ集執筆にとりかかるとの意気込みなど、ただただ驚嘆・敬服するのみであるが、じつは、いちばん興味を覚えたのは、次のところなのである。
……世の中は目まぐるしく変わったが、家屋だけは順調に老い窶(やつ)れたのである。
 ことに台所付近は根太(※ねだ)が崩れ、食卓に卵を置くと見るまに転がり落ちる。家が傾斜しているのである。ゴキブリが走り回り、それを鼠が追い回し、野良猫が床の隙間から上がり込み、野良犬同士が裏庭で喧嘩し、タヌキとイタチとハクビシンも来て、敏捷なハクビシンは台所の壁を泥足で駆けた。こうなると家人としては見ているしかない。……
 http://blog.livedoor.jp/hbk3253/archives/cat_10035849.html(「グループ桂」)