マヨネーズのおいしさ


 あるタレントが、糖尿病悪化で予定されていた舞台を降りたそうである。持病があるにも拘わらず、妻の監視をくぐってたとえばかつ丼にマヨネーズをかけて食べたりしていたとのこと、プロ意識の欠如には呆れるばかりである。
 ところで、マヨラーなる語もあるほど、マヨネーズは多くの人に好まれているようである。こちらはとくに多く使用するわけでも、ことさら避けることもない。マヨネーズの危険な〈おいしさ〉について、伏木亨京都大学教授は、『ニッポン全国マヨネーズ中毒』(講談社)で説明している。
……マヨラー出現のからくりは簡単である。マヨネーズの主成分は油である。油をふんだんに使った料理はこくがあっておいしい。しかも、油と共存させた風味や香辛料はや必ず病みつきになる。
 これは、味覚や嗅覚と油のおいしさの快感との、食行動科学でいう「連合学習」として、科学的にも説明が付く。……
 マヨネーズのおいしさとは、教授によれば「油の高カロリーによる報酬効果」であるそうで、病みつきになるという「油の薬理学的報酬効果」についてすでに明らかになっているとのことである。ところが最近インシュリン分泌とその作用を重視し、脂肪やタンパク質よりも糖やデンプンに注意することを奨め、カロリー摂取量だけでは体脂肪の蓄積を考えない見解が流通している。これに対して、伏木教授は反対している。
……まず、最も基礎的なことだけど、同じカロリーの食事をデンプンの多い食事でとる場合と、脂肪の多い食事でとる場合を比較すると、デンプンの多い食事のほうが体脂肪の蓄積が少ない、つまり痩せられる。多くの実験例があり、間違いはない。……
 なるほどマヨネーズの主成分は油であるから、多くとれば総カロリー量が増えてしまう。控えなければならないのは道理である。いっぽう、いまのマヨネーズの油に多く含まれるのはオレイン酸であるから、むしろ体によいのだという考え方もある。マヨネーズのG1値(食後に血糖値が上がる速度を数値化したもの。ブドウ糖をとった場合の数値を100 とした場合、それに対してほかの食べ物をとったときの相対的な比をあらわす。)は、14で意外と低い。
   http://hontonano.jp/nutrition/004_oleic%20acid.html(「オレイン酸:栄養の基礎知識」)
   http://www.drrk.net/gi.html(「食品のG1値一覧」)
   http://hontonano.jp/nutrition/2000kanri/050-insulin.html(「G1値とインシュリン分泌」)
 みずからも糖尿病の持病がありながら、確たる信念に基づいてマヨラーであると公言している医師もいるので驚く。健康管理に関しては、人さまざまであることを思い知らされる。
   http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1667.html(「マヨネーズと糖質制限食」
 ちなみにこちらの健康診断データは、HbA1c=5.1(4.3〜5.8%基準)、AST:GOT=22(11〜35基準)、ALT:GPT=20(6〜39基準)、中性脂肪=115(30〜149基準)、HDLコレステロール=69(40〜79基準)など。マヨネーズの摂取量をいまのところあまり気にしなくてもよさそうである。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町に咲く、上マンサク、下藤の花。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆