「書縁千里」というほどではないが

 文学的香気漂うサイト「作家秦恒平の文学と生活」の「e-literary magazine」に、いまは亡き国文学者・文藝評論家の長谷川泉氏の「書縁千里」というエッセイが収録されている。医学書院の役員でもあった長谷川泉氏が、そこにかつて勤務していた秦恒平氏に、蘭亭と紹興のつながりを想いつつ「文質彬々」の書を贈ったことが述べられている。
  http://umi-no-hon.officeblue.jp/home.htm(長谷川泉「書縁千里」)

 こちらも長谷川泉氏から書をいただいたことがある。拙著『メドゥーサの眼』(龍書房)を上梓し、氏に贈呈した折のことで、その禅宗のことば「啐啄(そったく)」の二文字は、大いなる励ましとなった。
(「萬古清風」)(「九十翁般若」)(「玄峰の印譜」)
 昔実家から独立祝いとして受け取った掛け軸を虫干ししている。この書は、伊豆三島の臨済宗妙心寺派龍澤寺を再興した山本玄峰老師(1866〜1961年)の揮毫(きごう)である。
 http://sizutabi.zouri.jp/misima/ryusawa.html(「龍澤寺の概要」) 
 山本玄峰老師については、戦後有力な政治家が教えを受けに訪れたことなど知られていよう。
 http://www.city.mishima.shizuoka.jp/ipn000119.html(「龍澤寺の名僧」)
 山本玄峰老師の作品は、臨済宗派の作品を多く扱っているらしい京都左京区北白川の「奇品堂」で入手できるようである。こちら所蔵の「萬古清風」と同じ掛け軸もある。
 http://www.kihindo.jp/kobokuseki/rinmyou/genpou.html(「奇品堂・山本玄峰コレクション」)

 
 NHK朝ドラ「都の風」の題字や、「風の盆恋歌」の歌手石川さゆりさんの帯の字などで世間的には知られた、北陸金沢の亡き書道家坂野雄一氏には、良寛和尚のことばをめぐる、コピー手作りのエッセイ集を贈られたことがある。『小説室生犀星』(菁柿堂)の作家葉山修平氏との縁に由るものであった。時おりパラパラ捲って良寛および坂野氏の人生洞察に接している。
 http://satsuki-pro.fan.coocan.jp/kokoro-17.htm石川さゆり風の盆恋歌」)
 みずからは書はまったくお手上げであるが、達人の墨跡を眺めるのは悦びである。