土井典の肥満体人形


 榊山裕子『愛玩拒否の人形・土井典とその時代』(DFJプレス)が、ようやく発刊された(12/16初版)。フェミニズムジェンダー論の考え方を基底に、人形作家土井典の人形制作が、男のエロティックな視線の対象として愛玩される人形を超えて、自らの主体としての女性の身体表現に収斂していく過程を、澁澤龍彦三島由紀夫篠山紀信荒木経惟種村季弘土方巽寺山修司らとの出会いとその影響との関連で考察している。土井典再評価の起爆剤となるだろう。
▼現代は多様性の時代と言われるが、それは特権的な中心がなくなった時代である。それは中心にある何者かを批判したり、撹乱したり、ずらしたりする表現がかつてのような効力やスリリングな魅力を失っていく時代でもあるが、土井典の肥満体人形はそもそもそうした差異と戯れる表現ではなく、不器用なまでに正面から、主体としての肯定的な身体表現を模索するものであった。
 土井の肥満体人形は、マネキン的な美が美しいとされた時代の美の基準に対する異議申し立てからはじまったとしても、その存在感はそうした批判的視点を超え、純粋に自己肯定的な、人形による身体表現として、今も変わらぬ存在感を誇っているのである。(p.323)
 

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 天井桟敷の『大山デブコの犯罪』公演でロビーに飾られた大山デブコ人形の(わが所蔵の)ミニチュア人形。人形製作の土井典さんの(画廊で聴いた)お話だと、大山デブコ人形、公演後しばらく寺山修司が自宅に持ち帰っていて、返却してもらったところ、巨乳のあたりが手垢で汚れていたそう。面白い。

 2006年10/26 某画廊(どこだか忘れた)にて、大山デブコ人形を購入した折、土井典さんに撮影してもらった写真。

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