タイワンヒザクラ咲く

 

貫地谷しほり&宮嶋麻衣=喜代美&順子〈再会〉

 

東京二期会オペラ劇場『TURANDOT(トゥーランドット)』(2/24(金)東京文化会館)観劇

  まだ桜(ソメイヨシノ)は開花していない中、けっこう人は出ていた、当日の上野公園であった。

 タイトルロールの土屋優子(ソプラノ)は、東京二期会オペラ劇場で初めて聴く歌手。イタリアで修業中、今回大抜擢とのこと。Brava! 圧巻のソプラノであった。スケール感があるので、いつか本人も希望しているらしいワーグナーの楽劇でまた聴きたいもの。

 第3幕、王子カラフ(城宏憲・テノール)の酔わせるアリア「誰も寝てはならぬ」の後、彼の名前・正体をトゥーランドット姫の命による拷問によって知らせないため、みずから手首に短刀をあてて自害する、カラフを秘かに慕うリュー(谷原めぐみ・ソプラノ)の最後のアリア、あまりに切なく美しい。花粉症もあってか、不覚にも涙で目を痛くしてしまった。

 前2列が空けてあったので、実質最前列の3列目(こちらは4列目通路側端の席)に、「大川博」のハチマキのようなものを頭に付けた男性がいた。どうやらシニカルな狂言回し、京劇面(メイク)の3人、大臣、ピン・パン・ポンの内、ピン役の大川博バリトン)の応援団長らしかった。オペラ・演劇鑑賞では珍しい光景だが、とくには違和感はない。いろいろな人がいるもんだ、という感想であった。

 帰宅して、興奮冷めやらず。駅構内で購入した、横浜ガトー・ド・ボワイヤージュの苺のショートケーキでひとりお茶した。

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ヒカンザクラ(緋寒桜)orカンヒザクラ(寒緋桜)咲く

 

黒人差別とゲイ差別:『LAW&ORDER:性犯罪特別捜査班(SVU)』S5-20

  Hulu配信の米国放送連続刑事ドラマ『LAW&ORDER:性犯罪特別捜査班(SVU)』のシーズン5のエピソード20は、DL(down-low)の問題を扱っている。
 街娼が多く立っている街で、車の中で殺された一人の白人男性が発見される。男の身元は男娼が盗んで捨てたバッグの中身から、地方検事補のジェフだと知れる。そしてSVU(性犯罪特別捜査班)が調べると、もう一人の男性が車中にいたこと、ジェフはホモセクシャルで、車中で性交渉があったと推定されることが判明。何とジェフはSVUのオリビア・ベンソン(マリシュカ・ハージティ)刑事のかつて短期間で別れた恋人であった。
 ジェフと親密であった同僚のアンディ検事補が容疑者として捜査線上に浮かび上がるが、ジェフの変異株のHIVにアンディも感染していることなどの状況証拠はあっても、本人が強く否定し決定的な物的証拠が出ていなかった。また妻・幼い娘と仲睦まじい家庭生活を送っていることも判断を鈍らせる。ニューヨークのハーレムで生まれ育った黒人のオダフィン・チュツオラ(アイスーT)刑事が、「あの男はdown-lowだな」と見破り、本ボシとなった。

ejje.weblio.jp つまり女性と堅実な家庭生活を営みながら、裏で男性と愛し合っている人物であったのだ。SVU専属のケーシー・ノヴァク(ダイアン・ニール)検事補は、アンディが取り調べで留守中の住居を訪問し、HIVに感染してしまったその妻と話す。妻は、警察署の取り調べ室に「自らの意志で」入り、夫にこれまでの関係を振り返り「今までも、これからも愛し続けている」と言って「あなたを赦す」と告げてから、「家族を社会的にどん底に突き落としたあなたを許さない」と断じた。アンディは耐えきれず、「ダマしててすまない。ジェフが家族を捨てて自分と一緒になってくれ、と迫ったので、止むを得ず殺してしまった。家族を愛しているからなのだ」とデスクに泣きながら俯したのであった。感動的であった。
 悍(おぞ)ましいレイプ犯罪に憤り、正義のために時に適正な手続きを忘れ逸脱し自らの地位を危うくしてしまう美人検事補ノヴァクには、いつもハラハラさせられ、しかし喝采を送る。なおかつてジェフと交際していたベンソン刑事は、監察医の検査でHIV感染について陰性であった。よかった。
 このDL(down-low)の問題に関しては、次のサイトの記事が参考になる。

sistah.livedoor.blog

▼一般に黒人男性のゲイに対する態度は対極化しており過剰に嫌悪感を表すか、親睦的であるかのどちらかのようだ。それでもホモフォビア(ゲイを極端に嫌う事・人々)は黒人社会で異常に多い。事実、黒人社会内のゲイ結婚反対の割合は他のどの人種グループよりも高く、これは彼らの深い信仰と伝統的考え方がルーツになっている。その中で何人かはメインストリームから抜け出してDLライフについての現状の認識と黒人社会への影響について学ぶことを呼びかけているが、そのトピックは未だ苦々しい顔で受け取られ、必ずといっていいほど「ゲイは罪だ」という反論で終わってしまう。▼

www.afpbb.com

gigazine.net

 

浜離宮恩賜庭園の菜の花

 

「エゴン・シーレ展」に寄せて

   エゴン・シーレの研究家にしてコレクターとして知られた、オーストリアのサージ・サバスキー所蔵作品から77点、そしてシーレの師であったグスタフ・クリムトの作品から10余点を企画展示した「運命の画家エゴン・シーレ展」が、1979年西武百貨店池袋店12Fの西武美術館にて催されている。他の画家の作品にはない新鮮さと昏いエロティシズムに驚いたものだった。しかし、エゴン・シーレについては作品以上に、画家の人生そのものに興味が湧く。ヘルベルト・フェーゼリー監督の『エゴン・シーレ 愛と陶酔の日々』は、ジェーン・バーキンとクリスティーネ・カウフマンの二大女優共演で面白い映画であった。ラウル・ルイス監督の『クリムト』より作品としてずっといい。いつかまた観てみたい。

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エゴン・シーレ(マチュー・カリエール)の画家としての半生を、愛した二人の女性、モデルのバリ(ジェーン・バーキン)と隣家の住人の娘エディット(クリスティーネ・カウフマン)との関わりを中心に描いている。シーレの作品の映像も多く、堪能できる。バーキンとともに、「戦後ドイツ最大の清純派スター」カウフマンのヌードも観られ愉しい。とくに印象的なシーンは、戦争が勃発しシーレが兵役にとられ、短時間の逢瀬で、エディットが中尉との仲を疑われ、あのひとが一方的に自分を好いているだけで、疑われるようなことをする男性ではないと否定するところ。去って行ったバリの名を出してシーレを牽制したり、エディットの可憐さと怖さがよく醸し出されていた。むろんエディットは、出席したパーティーで、中尉の誘惑にみずから乗って官能のひと時を過ごすのである。▼

隅谷三喜男没後20年(2003年2/22没)

www.narita-kyousei.gr.jp

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▼成田飛行場建設で尽力した故隅谷三喜男氏は、鉱毒事件解決に少なからぬ(当時はキリスト教徒じたい多くなかった)キリスト教徒が関わっていたことについて述べ、
……だが、その点でもっとも興味をひくのは、田中正造その人である。かれも三五年六月、有名な「アクビ事件※」で入獄したとき、求めて聖書を読んだのである。東洋的教養のなかで育ったこの義人は、木下や島田や、その他多くの自分たちを助けてくれるキリスト教徒を見て、キリスト教に関心を寄せるに至ったのであろう。その後のかれの日記には、聖書の影響がかなり顕著にあらわれている。最後の日記には「悪魔を退くる力なきは、その身も悪魔なればなり。己にすでにその身悪魔にして、悪魔を退けんは難し、ここにおいて懺悔洗礼を要す」と記されている。かれの唯一の遺品であった頭陀袋から出てきたものは、日記三冊、鼻紙少々と新約聖書一冊であった。……(公演パンフレットp.23)
 ※1900(明治33)年川俣事件公判の傍聴中田中正造があくびをして官吏侮辱罪に問われ、裁判にかけられた事件。 
 昔故隅谷三喜男氏が夏に妙高高原の別荘に滞在していたとき、その近くのペンションに2、3日泊まったことがあった。成田基地阻止闘争の過激派による襲撃に備えてだろう、そのペンションが何人かの警護の人たちの連絡所となっていて、その男たちが慌ただしく動いていたことを思い起こす。別荘の庭では、麦わら帽を被ったとても可愛らしいお孫さんの少女が蝶を追いかけていた。いまどうしているだろうか。成田から世界に羽ばたいていることだろう。▼2013年9/4記

 

向島百花園のシナマンサク咲く

 かつてわが庭にも、シナマンサクよりは花が小さいマンサクが咲いていたが、枯れてしまった。