米倉斉加年の絵本『多毛留(たける)』(偕成社)

   米倉斉加年の絵本『多毛留(たける)』(偕成社)は、所蔵している。昔津田沼パルコでのサイン会で入手したもの。

 昔々倭の国の奴津(なのつ)に、阿羅志(あらし)という漁師がいて、ある日海でひとりの美しい少女を救った。2年経って浜の小屋で二人は結ばれ、多毛留を産んだ。多毛留が15歳の年浜辺に父子が漂流して倒れていた。介抱して助けると多毛留の母は沈黙を破って、異国の言葉を発しその子供を抱いた。多毛留は察したのだ。その子の母が多毛留の母だと。父子が百済の人とわかると、阿羅志は銛で殺そうとするが、多毛留が父阿羅志を銛で刺してしまう。百済の父子のために阿羅志の舟に3人を乗せて押し出すと、母は海に飛び込み、浜に戻ってきた。多毛留の母として生きることを選んだのだ。哀しい物語である。

「あとがき」で、「私は福岡の生まれです╱玄界灘のむこうは朝鮮です╱小さい時から朝鮮を知っています」と米倉斉加年は書いている。いまに至るまで朝鮮半島は近くて遠いのである。

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