「エゴン・シーレ展」に寄せて

   エゴン・シーレの研究家にしてコレクターとして知られた、オーストリアのサージ・サバスキー所蔵作品から77点、そしてシーレの師であったグスタフ・クリムトの作品から10余点を企画展示した「運命の画家エゴン・シーレ展」が、1979年西武百貨店池袋店12Fの西武美術館にて催されている。他の画家の作品にはない新鮮さと昏いエロティシズムに驚いたものだった。しかし、エゴン・シーレについては作品以上に、画家の人生そのものに興味が湧く。ヘルベルト・フェーゼリー監督の『エゴン・シーレ 愛と陶酔の日々』は、ジェーン・バーキンとクリスティーネ・カウフマンの二大女優共演で面白い映画であった。ラウル・ルイス監督の『クリムト』より作品としてずっといい。いつかまた観てみたい。

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エゴン・シーレ(マチュー・カリエール)の画家としての半生を、愛した二人の女性、モデルのバリ(ジェーン・バーキン)と隣家の住人の娘エディット(クリスティーネ・カウフマン)との関わりを中心に描いている。シーレの作品の映像も多く、堪能できる。バーキンとともに、「戦後ドイツ最大の清純派スター」カウフマンのヌードも観られ愉しい。とくに印象的なシーンは、戦争が勃発しシーレが兵役にとられ、短時間の逢瀬で、エディットが中尉との仲を疑われ、あのひとが一方的に自分を好いているだけで、疑われるようなことをする男性ではないと否定するところ。去って行ったバリの名を出してシーレを牽制したり、エディットの可憐さと怖さがよく醸し出されていた。むろんエディットは、出席したパーティーで、中尉の誘惑にみずから乗って官能のひと時を過ごすのである。▼