近松半二作『近江源氏先陣館ー盛綱陣屋ー』(3/24 国立劇場)観劇

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 3/24(木)は、国立劇場にて近松半二作(厳密には、ほか作)『近江源氏先陣館ー盛綱陣屋ー』一幕を観劇。通し狂言ではなく一幕のみ。『一谷嫩軍記』の「熊谷陣屋」と同じ。内容的にも、戦乱の中での「首実検」と「子供の身替り」という、哀切を超えて非情さ際立つドラマで共通している。物語の表側は(裏側は徳川家康軍と豊臣秀頼軍との大坂城をめぐる攻防)、鎌倉方と京方が近江坂本城をめぐって攻防、それぞれの陣営に兄(佐々木盛綱)と弟(佐々木高綱)が分かれて戦い、捕まった弟の息子小四郎が父高綱の首とされるじつは偽首を見て自害、敵を欺く企みと見破った盛綱は、主君北条時政への忠誠を裏切り、まさしく弟高綱の首だと証言した。主君への忠誠と兄弟愛との葛藤、それにそれぞれの妻=母(早瀬と篝火)の子を思う心情が交錯して、複雑な感情を抱かされる。時あたかもロシアのウクライナ侵略の戦争が続いて予断を許さぬ状況、切迫感と悲壮感が舞台に漂ったのであった。盛綱は真田信之、高綱は真田信繁(幸村)をモデルとしている。
「首実検」と「子供の身替り」の物語は、『菅原伝授手習鑑」や『義経千本桜』でも挿入されているが(たしかNHK大河ドラマ『おんな城主直虎』でもあった)、黒石陽子東京学芸大学教授は、上演筋書で、『一族に降りかかった戦乱の悲劇を「首実検」の一瞬に凝縮収斂させるという作劇術は、近松半二ならではの熟練の技である』としている。
 モモケン=尾上菊之助の佐々木三郎兵衛盛綱は、絵柄よく愉しめた。陣屋に佐々木高綱討ち死にを注進するのが二人、はじめが「暴れの注進」=信楽太郎(中村萬太郎)、次が「道化の注進」=伊吹藤太(中村種之助)。この二人の対照の妙も面白く、遊び心が舞台の悲壮感を和らげている。

 終演して劇場の外に出れば、主役の桜が咲き、辛夷が脇を固めていた。ユキヤナギもみごとに枝垂れ咲いていた。

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