男優のこと:土方歳三役

    歴史家が感心するほど、今回のNHK大河ドラマ『青天を衝け』は史実に能う限り忠実に物語を展開させているようである。もっとも、渋沢栄一吉沢亮)が百姓身分を捨て志士として血洗島から京へ旅立つとき、父(小林薫)より貰った百両もの大金を遊蕩で使い果たしてしまう、そのいい加減さについて批評的な視点を欠き、『麒麟がくる』で展望・戦略なしに謀反を起こし大勢の臣下を死なせてしまった明智光秀に対する批評的な相対化を欠いていた、甘い〈伝統〉なのだろう。

   初めて新選組副長土方歳三が出てきたときは、殺陣は美しくみごとではあったが、演じるのが町田啓太というのは違和感があった。今NHKで再放送中の『花子とアン』で、ヒロイン村岡花子吉高由里子)の夫英治(鈴木亮平)の弟村岡郁弥役を演じていて、この人物が明るく心優しい青年なので、容赦なく攘夷派を斬り殺す土方歳三のイメージとはかけ離れている。それに何より、土方歳三といえば、昔のテレビ時代劇『新選組血風録』『燃えよ剣』の栗塚旭のイメージで固定している。

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 しかし昨日6/27放送の『青天を衝け』で、町田啓太の歳三役も魅力的に思えてきた。違和感なく、渋沢栄一とのまたの出会いの場面を愉しみに待ちたい。

 

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