杉原邦生演出の『少女仮面』が今年最初の観劇

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 昨日1/26(日)は、世田谷三軒茶屋シアタートラムにてマチネー公演、唐十郎作、杉原邦生演出・美術の『少女仮面』を観劇。春日野八千代若村麻由美、貝=木崎ゆりあのキャスティング。この作品は、1982年7月渋谷パルコ3・SPACE PART3で、小林勝也演出、春日野八千代渡辺えり子(現・えり)、貝=森下愛子の舞台を観ている。その時は、渡辺えり子が上半身裸になる熱演で、今回も、森下ベニサン・ピットで昔裸身を晒している若村麻由美が同じく妖艶なヌードの肉体を観せるのかと、開演前から緊張していたが、「俺の肉体はどこに行ってしまった!?」という台詞を放つ幕切れまで、服を脱ぐことはなかったのであった。うーん、残念。
 大杉栄伊藤野枝夫妻虐殺の責任者〈甘粕大尉〉が、春日野八千代入院中の満洲の精神病院に現われるが、演じ続ける〈自由な〉肉体が観客の視線によって朽ち果てるとともに、〈自由な〉肉体一般は権力によって物理的に抹殺される歴史的現実もあることを暗示していよう。腹話術の人形がいつか逆転して、腹話術師を人形として扱うに至る挿入されたエピソードも、誰かのために演じ続ける肉体はいずれ抜け殻=人形と成り行く事態を示している。 
 わが贔屓のフランスの女優ソフィー・マルソーが、みずからの小説で主人公に託して書いた述懐も、この作品の主題と重なろう。

 ……その幻の世界では、なにを話しても、文字遊びのようにどんどん点数が加算され、世界が危険なまでに活性化していく。そこでは〈人間〉と〈英雄〉が同一視され、誰もが〈私〉と〈彼〉のあいだをふらふらと行き来する。この世界から逃れるには、お酒で酩酊するか、戦士や狂人になるか、魔法使いになって陶酔しながら炭の上を歩き、踊りながら奇跡を願うしかない。この仮想世界では、人間の精神は、恐ろしいほどに陽気で、とらえどころがない。/人は幻の世界に入りこむと、魅力的な知性をもった、絶対になびくことのない悪魔に心を奪われ、不可能を追いかけてしまう。しかし、それで得ることができるのは、指に引っかかった数本の金髪と、肌色のガーゼのようにもろい蠅の脚ぐらい。……(『うそをつく女』金子ゆき子訳・草思社

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