コンメディア・デッラルテの舞台

f:id:simmel20:20191018124425j:plainf:id:simmel20:20191018124438j:plain

   イタリアで16世紀に端を発して17世紀に流行したコンメディア・デッラルテは、「舞台上に狂気の発作、決闘、棒打ち、変身、略奪を実現し、場内を謝肉祭のような気分に浸らせ、俳優たちは曲芸的演技を続発させ、またラッツィと呼ばれたアドリブのせりふを振りまくという他と全くカテゴリーを異にする芝居」で、仮面劇であった。一度は仮面を否定したが、再び「仮面の効果を思い出してそれを部分的に復活させて」現代に至っている。(野上素一氏解説による)

 ジョルジョ・ストレーレル演出、フェルッチョ・ソレーリ主演(アルレッキーノ)のコンメディア・デッラルテの芝居、カルロ・ゴルドーニ作『二人の主人を一度に持つと』を、1979年3月19日、新宿文化センターでのミラノ・ピッコロ座来日公演で観ている。どぎつい笑いの表現に初めは戸惑ったが、すぐに慣れて愉しめた。

 道化と哄笑といえば、だれでも亡くなった(2013年3/10)文化人類学者の山口昌男さんを思い浮かべるだろう。2013年3/13にブログで追悼の記事を書いている。再録したい。

山口昌男氏の道化=トリックスター論には大いに知的刺激を受けている。1979年ミラノ・ピッコロ座が初来日公演(『二人の主人を一度に持つと』)したとき、山口氏は、たしか「日本経済新聞」文化欄で、幕開きの前夜一緒に食事をしたアルレッキーノ役者フェルッチョ・ソレーリ氏は、生真面目な日本の観客が笑ってくれるだろうかと、大変心配そうであったが、初日の舞台が全く杞憂であることを明らかにした、と書いていた。そして、日本の観客がたっぷり味わったこととして、チャップリンキートンなどの祖先が、悪戯者アルレッキーノであることと、「仮面が、演技をいかに舞台を超えた遠い地点にまで導いていくかということ」の二点を指摘していた。ミラノ・ピッコロ座の『二人の主人を一度に持つと』の舞台は、1979年3/19(月)に、東京新宿文化センターで観劇している。忘れられない一夜となった。

f:id:simmel20:20191018124159j:plain

 わがコレクションの一つに、ヴェネチアの当時知られた仮面職人が作製したアルレッキーノの仮面がある。かつてあった神田のヴェネチア工芸品の店で購入したものである。あらためてこの仮面を眺めながら、文化人類学山口昌男さんのご冥福を祈りたい。

f:id:simmel20:20191018124521j:plain