オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』鑑賞

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 昨日5/17(金)は、天王洲(てんのうず)・寺田倉庫G1-5F特設舞台での歌舞伎公演、近松門左衛門作、赤堀雅秋脚本・演出『女殺油地獄』を鑑賞。初夏到来を思わせる陽光の下、エレベーターで寺田倉庫を5階に上ると、洞窟の中のような薄闇の空間に迷い込む。中央の紗幕で覆われた舞台を東西南北四方に囲んで、パイプ椅子が設けられていた。チケットの東の席に坐って、いずれ漆黒の闇が訪れて、思わぬ惨劇が突発する、との期待感が、叩かれる太鼓の音とともに高まってくる。

 紗幕にはプロジェクションマッピングが映され、現代の繁華街の闇の世界のような映像があるスピード感をもって流される。あきらかに、近松のこの世界が現代にもそのまま直結していることを意識した制作である。服装も現代ファッションで、バック音楽はロックかと予想したが、杞憂であった。正統の歌舞伎であり、竹本司大夫の浄瑠璃、豊澤勝二郎の三味線の演奏が、場の緊張感を誘導する展開であった。

 書割も豪華な装置も欠いているが、登場人物の所作と会話でその場の情景と雰囲気が滲み出るような、赤堀雅秋の演出。殺戮の場で油らしきものは流れないが、与兵衛の引っくり返る動きで読み取れるわけだ。〈花道〉も東席の両側が利用され二つできていて、親しみやすかった。

 難点としては、打ちっ放しコンクリートの空間の為か台詞が聞き取りにくいところもあったことと、観客席がフラットで前列の人の頭がしばしば邪魔となったこと。中村獅童を歌舞伎の舞台で観るのは初めてだが、青春の迷いと暴力性を演じるのに相応しい面構えと感じた。不覚なことに、豊嶋屋お吉と芸者小春は、下唇の少し出た似た女形だなと思っていたら、後でパンフレットを見て、中村壱太郎の二役と知り、わが認知能力の衰えに驚いた。

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 天王洲アイル駅から新木場駅を経由して西船橋駅に戻り、船橋駅に寄り道して、東武デパートで、5/19(日)に訪問する連れ合いの実家への手土産を二つ購入した。水羊羹セットを買った虎屋の女店員さんが、「袋もう一つ入れておきました」というので、「虎屋さんは、中身よりも袋に価値があるから、喜ばれるでしょう」と応えたら、大笑いしていた。可愛いね。

 ラッシュアワーの電車を乗り継ぎ、帰路の最後は重い荷物を抱えてだったので、ひさしぶりにぐったりしてしまった。

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