ああ澁澤龍彦


 そういえば昨日8/5(火)は、澁澤龍彦の命日(1987年8/5没)であった。鎌倉の浄智寺の墓前には、いまでも澁澤龍彦好みの小物が供えられているのだろうか。浄智寺は静穏で、展墓にまたいつか訪れてみたい寺である。昔はすぐ隣に磯田光一の墓もあったが、いつぞや境内の墓地に行ったところ、移転していたようであった。
 http://kamakura-guide.jp/jyouchiji(「浄智寺:鎌倉タイム」)
 澁澤龍彦の書いたものは、だいたい購入して読んでいたときがあった。いまは大判の『空想美術館』(平凡社)を時おり覗いてみる程度である。あわてて澁澤本を集めてみたが、とくに愛読した『裸婦の中の裸婦』(文藝春秋)は見つからず、『澁澤龍彦文学館・全12巻』(筑摩書房)は、第1巻のみ所在不明である。『フローラ逍遥』などその他あるはずだが、どこかに埋もれてしまっている。

 いまは亡き博覧強記の編集素浪人ディオゲネス(二宮隆洋)さんが、矢島文夫著『オリエントの夢文化』についてのAmazon reviewで、面白いディレッタント頌を書き残している。共感する。
……学問的な夢の文化史ではなく、それらに関する書物エッセイと言うべきもの。愛書家の面目躍如である。思うに、アカデミズムの主流ではなくとも、豊富な話題と旺盛な執筆活動で若者を本の世界へと導いてくれた書き手がかつてはいた。ディレッタント? こちたき「専門家」はそう切り捨てるかもしれないが、どっこい教育的価値はどちらが高いのか。「中間的」な著者・翻訳者や読者を馬鹿にしてはいけない。教養の没落とはそういう中間層の消滅なのではないのか。
 本書の最終章はコロンナ『ポリフィルスの夢』。アルベルティに擬せられもするこの作者にせよ、紹介者澁澤龍彦にせよ、英訳者ジョスリン・ゴドウィンにせよ、そしてほかならぬ矢島文夫その人も、みな良きディレッタントだ。学者は呪われよ、衒学者は嘉されよ。ディレッタント万歳!……
 http://www.amazon.co.jp/gp/cdp/member-reviews/A1VMOCW2JZK83P?ie=UTF8&display=public&page=8&sort_by=MostRecentReview(「編集素浪人ディオゲネスのレビュー」)