怪獣モスラの誕生


 NHKBSプレミアムでは今月はゴジラ特集を企画し、これまでのこの怪獣登場の作品を連続放映している。昨日7/25(金)は、「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」(2001年)。この映画は初めて観たが、驚いた。本来の凶悪怪獣に戻った(?)ゴジラに対して、日本の国土と民を守るべく大和の聖獣たちが立ち向かうという設定になっている。金星を滅ぼした凶悪宇宙怪獣キングギドラも、なにやら龍神信仰の民俗宗教に繋げて、ヒールから善玉役に変貌している。モスラもはじめは名なしの昆虫怪獣として、ゴジラ放伐のために羽化するのである。あまり感心できない作り替えではあった。
 http://www.nhk.or.jp/bs/temporary/godzilla_2014july.html(『NHKBSプレミアムゴジラ」特集』)
 そもそもモスラは、作家の中村真一郎福永武彦堀田善衛らが創作したものである。関沢新一作シナリオ付きの『発光妖精とモスラ』(筑摩書房)のあとがき(回想モスラ)で、中村真一郎が書いている。
……最初に、ひとつの映画のなかで、怪獣が幾度か姿を変える「変形譚(メタモルフォーズ)」の物語にしようと思いついたのは私で、そのためには、芋虫からまゆになり、最後に蛾になる、三変化をする蛾の怪物がよかろう、ということになった。蛾、英語のモス(※MOTH)の語尾に、ゴジラにあやかってラ(※LLa)を付けようと提案したのは田中さん(※東京映画のプロデューサー)だったかも知れない。
 物語に恋愛を持ちこむ案を出したのは、ロマンチックな福永で、男は日本人の探検隊員にするが、女は巨人にしようということになり、これは、ザ・ピーナッツという、ふたごの可愛い歌手の売り出しに利用しようということになって、小人に変えられた。私たちの脳裡には『ガリバー旅行記』があった。
 日本の男と小人の女との恋愛の奥に、人間は肌の色や肉体の大小によって差別されるべきではない、というヒューマニスチックな主題をひそませたのは堀田である。……(同書p.171)