アルベール・カミュ原作『異邦人』観劇

 1/25(土)は、東京中野のレパートリーシアターKAZEで、東京演劇集団・風公演、浅野佳成脚本、白石圭司演出、アルベール・カミュ原作『異邦人』を観劇。昔世界文学全集の一巻に収められたこの作品を読んでいるが、いま手許にはないので翻訳者は不明である。2013年はアルベール・カミュ生誕100年であったことから、その記念公演となっている。
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20140104/1388819175(「アルベール・カミュ生誕100年記念公演」)


 舞台前面は、砂が浜辺のように小さな起伏をもって敷き詰められている。後方には、椅子とテーブルが3組並べられ、ひとがそこに坐ることによって、カフェであったり、〈世間〉の視線を象徴するものとなったりするのである。浜辺で殺人を犯し、その罪と人生を裁かれる主人公ムルソー役の中村滋以外の6人は、それぞれの人物のほか、法廷の場面では、検事、弁護士、裁判長の役を入れ替わって演じる。ムルソーを裁くのは、固有の人格ではなく、〈社会〉であることを暗示していよう。舞台の色彩は、ムルソーの恋人マリイ(渋谷愛)が赤のワンピースを着て登場したとき以外は、白と黒で統一されている。太陽の光の〈残酷さ〉を想像することができるだろう。ムルソーのこころのドラマを刺激的に展開させている音楽・音響の力が大きかった。作曲は、バンジャマン・クルシエ(Benjamin Coursier)、照明・舞台美術・音響は、フランソワ・シャファン(François Chaffin)。
 すぐれた舞台であることは間違いないが、観終わってこころの深淵に何か重いものが残ったとはいえない。観客としての怠慢を棚上げにして、どこに不足があったのか明確には示せないのである。
 これも昔観た、ルキノ・ヴィスコンティLuchino Visconti)監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演(ムルソー役)の映画『異邦人』をもういちど観てみたくなった。