モーリス・ベジャール振付『M』(+『サド侯爵夫人』)鑑賞記

  モーリス・ベジャール振付『M』は、三島由紀夫生誕80年没後35年記念公演の舞台を、2005年10/30(日)に、東京・ゆうぽうと簡易保険ホールにて観ている。

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▼10月30日(日)に、東京バレエ団公演、モーリス・ベジャール振付の『M』を、ゆうぽうと簡易保険ホールにて鑑賞した。上野水香(ローズ)さんは、高木綾(オレンジ)さん、井脇幸江(ヴァイオレット)さんらとともに一場面だけ登場したのみ。はじめやはり大柄な小出領子(海上の女)さんと区別がつかなかった。家を出る前、探してもオペラグラスが見つからなかったからだ。日本のダンサーのだれもが美しい肢体の持ち主とはなったものだ。高岸直樹(イチ)と踊った吉岡美佳(女)さんのしなやかな肢体はあまりに美しい。Mは、三島由紀夫のMのみならず、黛敏郎(音楽)のM、モーリス・ベジャールのMでもあるのだ。さらに、海(mer)、死(mort)、神話(mythologie)、変容(metamorphose)などのMでもあるそうだ。海から生まれ、海に帰っていく生命の循環がよくイメージされていた。動きとイメージの美しさを堪能した夜であった。

◆11月7日(月)三島由紀夫作、岸田良二演出『サド侯爵夫人』を観劇。このところ演劇の場を提供している東京上野国立博物館特別室。この作品の公演はだいたい観ている。今回は、ルネの母親モントルユ夫人が剣幸、サド侯爵夫人ルネが新妻聖子(パンフレットの写真)、サン・フォン伯爵夫人が椿真由美、ルネの妹アンヌが佐古真弓、シミアーヌ男爵夫人が福井裕子、家政婦シャルロットが米山奈穂というキャスティング。ルネ役の新妻聖子さんの声は美しく、最後の盛り上がりの長い台詞も音楽のように澱みなく聞えた。台詞劇のこの芝居にふさわしい女優さんであった。アンヌ役の佐古真弓さんは、後ろ向きで語るときよく台詞が聞きとれなかった。作者の三島由紀夫は、「セリフだけが舞台を支配し」「目のたのしみは、美しいロココ風の衣装が引受けてくれるであろう」と述べているが、今回は、登場の女性のヘアメイクがとても凝っていた。ヘア&メイクキャスティング担当は、堀裕美子。まさに目に楽しかった。
                                                (2005年11/9記)  

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