部落差別と文学—『異形の群』論争

 今年のダービー馬ディープブリランテ号が、屈腱炎のため競走馬引退をすることになったそうである。関係者の無念を思う。ダービー調教師矢作芳人さんの「サラブレッドはアスリートと思っていますので、引き際が大事だと考えました」(「サンケイスポーツ」10/26)との言やよし、その子どもたちに期待したい。
 開成学園硬式テニス部OB会の掲示板で、春に第11代部員であった矢作師のダービー制覇を祝福していていたが、同テニス部OB会別掲示板の第7代部員大岡吉一郎さんの旧い書き込みに注目した。

『7代 大岡 - 03/11/01 22:14:10
 コメント:
テニス大会は相当の盛り上がりだったようですね。ウラヤマシー。私は法事で四国の山の中に行っておりましたが、それはそれで天気も良くなかなかではありました。ところで今夏ネットで葉山修平(現代文の恩師であった先生)の著書を2冊購入しました(「異形の群」、「日本いそっぷ噺」)。中3の授業だったでしょうか、藤村の「破戒」を題材に部落の歴史と文学と部落との関わりの話になり、その中で「葉山修平の『異形の群』が『異形の群論争』を起こし云々」と話されたのがずっと気になっていたのですが、今回30年振りにその本を入手、ついでに直木賞候補となったもう一冊も購入しました。興味のある方、お貸ししますよ。無料で。』

(長谷川泉氏揮毫の「卒啄」)
 さっそくわが書庫など探索したが、この『異形の群』論争(の経過)を記録している、長谷川泉編『近代文学論争事典』(至文堂:1962年刊)が見つからない。念のためAmazonを調べると、古書価格が2万円を越えている。驚いた。いずれあちこちを探してみたい。この長編小説は、はじめ『天皇の村』として発表(同人雑誌「花」)され、東西五月社から上梓されたとき、『異形の群』という題名になったものであり、いま再び『天皇の村』の題名で東銀座出版社より発売(あさひふれんど千葉発行)されている。『異形の群』論争とは、作者と部落解放同盟系のひとたちとの表現・描写をめぐっての論争のことを指している。
 問題は依然として本質的には未決着なのだとわかるだろう。

葉山修平集―天皇の村 (房総文芸選集)

葉山修平集―天皇の村 (房総文芸選集)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のキキョウ(桔梗)の花。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆