横浜みなとみらいは、なぜ美しいか

 
 高校同級の岸田比呂志さんから、卯月盛夫早稲田大学教授との共著『都市づくり戦略とプロジェクト・マネジメント』(学芸出版社・2009年初版)が送られてきた。2/10(木)神田の中華料理店「好好(ハオハオ)」(高校の先輩経営の店ー料理美味し)にて、同級会があり、岸田さんと久闊を叙している折に、たまたま横浜みなとみらいの景観について話が弾んだ。横浜市都市計画局理事(都市計画部長兼務)の要職を経て、株式会社「横浜みなとみらい21代表取締役専務として、横浜みなとみらいのエリアマネジメントを指揮してきた岸田さんの著者があるということで、所望、すぐに昨日届いたという次第である。お返しに本日わが作品集をゆうメールで発送した。
 岸田さんの父君は、昭和の代表的建築・設計家の一人、岸田日出刀氏だ。中学時代、国語の教科書に父君の文章が収録されていて、驚いた記憶がある。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/岸田日出刀
 http://www.city.ichikawa.lg.jp/library/db/1002.html (市川ゆかりの作家・岸田日出刀)
 http://tenplusone-db.inax.co.jp/backnumber/article/articleid/184/ (言説としての日本近代建築)
 さて、全4章中、1〜3章は、岸田さんが執筆、「行政から民間へ、事業から戦略へ、インフラから上物へ、プランニングからマネジメントへ、大きくシフトしてきている」(卯月教授)都市計画の実践の成功例であろう、横浜みなとみらいの魅力を、第2章「都市景観と賑わいの創出」、その1「スカイラインとビスタ」で知ることができた。素人でも、都市づくりにおける魅力と斬新さについて十分わかるのである。
 みなとみらいの特徴的な都市景観を支えている、システム&工夫・努力が紹介されている。1)地区整備計画において、建物の高さ制限を設け、「横浜ランドマークタワーからクイーンズスクエア横浜を経て、パシフィコ横浜まで、優美な曲線を描くスカイラインが展望できる」のである。規制の枠内での「街づくり協議」を経た上での結果である。2)街のどの地点からも、海と港のビスタ(vista=眺望)が得られるように、各建物の建て方に配慮を求め、街路計画(放射状の直線的な広幅員の道路配置と、壁面後退の取り決め)を、この方向で一貫させた。
 3)8箇所の都市公園のほか、「街の中にさまざまな形での水と緑を積極的に導入するように配慮」することをして、コモンスペースを中心として、さまざまな工夫をして水と緑を確保している。4)建築物の外装に用いる色彩計画の基準を設け、基調色をブラウン系、クリーム系、グレー系と定めるなど、調和した景観の形成を意図している。かつてイタリアのフィエゾーレを旅したとき、どの家の屋根も赤色で、丘から眺めたときの美しさに息を呑んだことを思い出した。広告やサインについても、周りとの調和を考慮した対処を求めている。トラブルもあり、景観法に基づく法的規制も必要となったようだ。5)赤レンガ倉庫をはじめ歴史的建造物を保全活用することを、民間と公共の巧みなコラボレーションによって実現している。6)都市の屋外空間と建物とを結びつける中間領域としてのコモンスペースに、建築計画と調和した形でのバブリックアートを積極的に導入し、アート・ネットワークを構成しつつある。
 横浜といえば、名古屋グランパス対横浜F.マリノスの試合見物で、横浜中華街と日産スタジアムを訪れるのみであったが、今年はぜひみなとみらいを歩いてみたいと思うことしきりである。