『龍馬伝』のキャスティング

 NHK大河ドラマ龍馬伝』では、今後坂本乙女(寺島しのぶ)と千葉佐那貫地谷しほり)の出番がなくなってくるのかと思うと、寂しいところ。さて吉田松陰生瀬勝久はユニークな配役で、飯盛り女(遊女)役を、ほんのわずかな時間だけだが登場した、艶技派及川奈央の抜擢と併せ意外でも、どちらも結果は面白かった.
 新撰組近藤勇はいつ出てくるのだろうか.どの男優が配されているのだろうか.

 亡き加藤周一の姿を仰ぎ見たのは2回ほどで、1回は、渋谷の観世能楽堂での能楽鑑賞の折のこと.そのころは、2、3カ月に1度はお能を観に行っていたので演目は何であったか記憶していない.
 もう1回は上野での講演を拝聴したとき.「知り合いのあるフランス人が、幕末の人間で、吉田松陰近藤勇に日本人の人気があるようだが、解せない.片一方は、幕藩体制を壊すほうで活躍し、もう一方は、それを守るほうで行動した.同じ人間が、両方を評価することが理解できないと.そこで私は、日本人は心情の誠を重視する心情倫理であるから、徹底的におのれに誠実に生きたふたりに共に共感するのだと、説明した」といった趣旨の話は印象的であった.この論自体は独創的でもなく、相良亨倫理学など考究されていることだ.ただこのふたりの人物が事例として出されたことが、興味深かった.
 そこで『龍馬伝』の近藤勇を、同じ生瀬勝久に演じさせてみたらどうだろうか.どこまでもおのれに誠実に生きる人とは、ひょっとするとアブナい人でもあることが鮮明になってよろしいかも。
⦅なお写真(解像度20%)は、東京台東区の街のビル下で、春の訪れを告げるアセビ(馬酔木)の花.アマチュア写真家小川匡夫氏(日写連)撮影.⦆