篠山紀信の写真集『TOKYO NUDE』(朝日新聞社 1990年6月)

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   わが所蔵の篠山紀信写真集(多くがどこかに埋れてしまって発掘不能)のなかでは
『 TOKYO NUDE』(朝日新聞社 1990年6月)が最高の作品であろう。反センチメンタリズムの浅田彰氏が序文を寄せていて、いかにもこの人らしい批評である。

 とくに、高崎正治の設計した「結晶のいろ」という建築を舞台とする一連の作品は、東京の現在を絶妙なタイミングでとらえたものである。1987年に完成したこのカラフルなポストモダン建築は、どういう事情があってか、一度も使われないまま1989年にとりこわされた。束の間の夢と化した建築、その夢の記憶喪失にも似た終わり。こんなことがポストモダニズムの終焉を生きる現在の東京以外のいつどこで起こり得るだろう? 記憶の深みを欠いたこのまっさらな廃墟に、東京の分身たちが降り立つ。その一瞬の夢の光景を、篠山紀信は、一片のノスタルジーもなしに、あっけらかんとした表層性においてとらえてみせる。と、そこに現れるのは、まぎれもない東京の現実そのものだ。

 

篠山紀信撮影digi-KISHIN DVD モデル月船さらら

篠山紀信写真集『RINKO』(朝日出版社 2007年12月)モデル菊地凛子