杉並リリア主催『マリア・カラスの生涯』(10/1 東京文化会館小ホール)鑑賞

(第二部の1『ドン・カルロ』の「我らの胸に友情を」は、笛田博昭&池内響→宮里直樹&池内響に変更。笛田博昭、新型コロナ感染症の後遺症まだ完治していないため、とのこと)
 10/1(日)ソワレ、東京文化会館小ホールにて、マリア・カラス生誕100年を記念した企画、杉並リリカ主催の『マリア・カラスの生涯』を鑑賞した。司会進行は、杉並リリカ代表の酒井章。音楽への愛が伝わる情熱的な司会・進行であったが、演奏ごとに音響の声だけで出演オペラ歌手の紹介をするが、その都度「みなさまどうぞ盛大な拍手でお迎えください」とホール一杯に告げるのは、昔あった街のストリップ劇場の「みなさま踊り子に盛大な拍手を」の進行を思い出させ、少しくどい印象。黙っていても、こんなすてきなオペラ歌手たちを聴衆は拍手で迎えるよ。しかし酒井章氏が「COLUMN」で、オペラ歌手中心のかつて(1950年代〜1960年代)のオペラは輝いていたが、いま「歌手は指揮者や演出家に隷属し、オペラの暗黒時代に入ってしまった」とし、「オペラの復活のためには、歌劇場運営スタッフの充実と、歌手育成の強化が必要」と指摘しているところは、門外漢でも共感できることである。昨今のオペラの「新演出」とかいう演出家の出しゃばりは、時に理解できないことがある。
 森谷真理(ソプラノ)&宮里直樹(テノール)の『椿姫』「ああ、そはかの人か〜花から花へ」に始まり、森谷真理&笛田博昭(テノール)のジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』「愛の勝利」で終わる、マリア・カラス縁の選曲と構成、堪能・感動できたコンサート。『愛の妙薬』「女はわからんな」での池内響(バリトン)&宮里直樹、『カルメン』「あんたね?俺だ」の山下裕賀(ひろか・メゾソプラノ)&笛田博昭の二重唱もよく、マリア・カラスが最も多く出演したとのベッリーニ『ノルマ』「ご覧なさい、ノルマ」のタイトルロール(森谷真理)とアダルジーザ(山下裕賀)の二重唱、マリア・カラスが最後の舞台で歌った『トスカ』のタイトルロール(森谷真理)のアリアはこの企画の白眉、すばらしかった。控え目な藤原藍子のピアノが盛り上げたことも付記しておく。

東京文化会館小ホールは、大ホール入口左のスロープを上がったところにある。

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 森谷真理さまの、上記提言は、プログラム掲載の、酒井章氏の「COLUMN」での次の主張と重なる。
……海外からの劇場引越し公演はあまり意味がない。日本人の聴衆が、白人至上主義なので、法外に高価なチケットで、黄金時代に比べれば格段に劣るプロダクションを提供されている。このような現状を打破するには、文化行政の意識改革、聴衆の意識改革も同時に推進していかねばならない。未来のカラスやデル・モナコが歌劇場を熱狂させる日が到来することを強く願っている。……