柳家喜多八没後すでに5年

 柳家喜多八の生の高座を聞いたのは一度だけ。出囃子とともにいかにも気怠そうに現われ、重い足取りで歩を進めてさて坐って語り始めてからだんだん声が大きくなってくる、この噺家の落語のスタイルは愉しかった。今日が早いもので没後(2016年5/17没)5年目の命日である。
 かつて聴いた(2012年1/31)喜多八独演会のブログ記事を再掲し、亡き師匠を偲びたい。

▼昨晩は、正月最後の高座、柳家喜多八の「喜多八膝栗毛・冬之声」を聴いた。落語研究会の月例鑑賞会。参加は10名。会場は、東京銀座博品館劇場。番組は、前座に林家はな平(二つ目)の「鮑熨斗(あわびのし)」、喜多八の枕と区別のつかない噺、そして「味噌蔵」、仲入り後、花島世津子の奇術を挿んで、喜多八の「五人廻し」。
「梅の栄」の出囃子で登場した喜多八師匠は、「Wikipedia」の紹介通り、「けだるい雰囲気で座布団に座り、一見やる気のない枕から、いつの間にか熱演に引き込み、爆笑をさそう」展開であった。登場の雰囲気と違い、突然大声を出し、テンションが高くなる。このギャップに個性があるらしい。終始静かな語り口の、師匠の柳家小三治とはそこが違う。
「味噌蔵」は「いかに寒さを出せるかが命の落語」(立川志らく)だそうであるが、ここではせっかく結婚しながら独り寝しているケチな旦那の夜の寒さと、ついに女将さんの布団に入る温かさが印象づけられ、生まれた子供を実家に預けてさて旦那が実家の祝いに出かける日の寒さは強調されていない。しかし、留守の間の奉公人たちのどんちゃん騒ぎぶりが、とにかく楽しい。
「五人廻し」は、吉原女郎屋の若い衆が、複数相手でなかなか廻ってこない花魁を待ちわびている、それぞれ癖のある客にどう対処するか、そのやりとりが魅力の噺。お釜っぽい客のところが、表情・仕草秀逸で面白かった。若い衆のいう「これすなわち郭の法」は、「この落語最高のフレーズ」(立川志らく)だそうである。「これすなわちコンプライアンス」などと宣う、若い企業弁護士でも登場させて創作落語は創れないものかどうか。
 終演後、新橋駅近くの居酒屋で、極寒の夜更けるまで呑みかつ論じ愉快なときを過ごせた。帰宅してから、いつも月曜日0時05分からBSジャパンで観ている、青山倫子主演「逃亡者(のがれもの)おりん2」をテレビ東京チャンネルで観ることができた。歌舞伎っぽい仕立てで面白い。倫子おりんは、いよいよ色香が増して美しい。
 http://www.tv-tokyo.co.jp/orin2/onair/index.html(「逃亡者おりん2」)

                               (2012年2/1記)