銀座ブロッサムで「柳家小三治独演会」を聴く

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 昨日11/4(月)は、東京・銀座ブロッサム(中央会館)で、祝日ということで、めずらしく昼席の「柳家小三治独演会」を聴いた。じつに2年ぶりのS氏主宰落語研究会の定例鑑賞会への参加であった。今回の参加者は9名。K氏は、何と狭心症の手術で入院、2日前に退院したばかりでの参加であった。「浅草の旦那」と呼ばれるK氏、前日は周囲が止めるのも聞かず、長唄の発表会に出ていたとのこと、呆れてしまった。いつも着物で街を歩いているが、最近はアジア系の観光客とよく間違われるので、着物はやめているそうである。現役のときはメガバンクの支店長であったが、それは今やどうでもよい。

さて番組は、

前座:柳家三之助 二人癖(のめる)

柳家小三治:まくら(延々ラグビーの話題)の後、死神

    (仲入り)

柳家小三治:小言念仏

 Sさんが、こちらの左耳難聴を知って、前列の席を確保してくれたので、夏の「柳家小三治一門会」の高座「粗忽の長屋」の時より聴きとり易かった。ただ小さい声で話すこともあり完全に全部聞こえたわけでもない。とくにまくらの噺は細部で伝わらない。

 小三治師匠の「死神」。やや暗いトーンとシュールな雰囲気を保って展開。呪文の後手を2回叩くという、死神の教えた〈治療〉もしつこく繰り返さず、2回目からは呪文だけにしたのはシンプルでよい。オチに小三治独特の、くしゃみがあるらしいが、立川志らくは、主人公があらかじめ風邪を引いていて、最後にくしゃみで自分の寿命の蝋燭の火を消してしまうというオチのつくりは、あざとく「落ちの為の風邪である。卑怯な演出だ」(『全身落語家読本』新潮選書)と批評している。今回、主人公は風邪を伏線とせず、ただくしゃみをして火を消してしまうオチだった。これでいいのではないか。

 いつものこととはいえ、まくらが異常に長すぎて、「死神」一席ですでに終演時間に10分ほど迫り、舞台袖から女性マネージャーの「もう一席演ります」との声に、「ええっ、終わりじゃないの?」と師匠。けっきょく仲入りを設けて「小言念仏」の一席。音楽の演奏会でのアンコール演奏のような展開であった。あるいはこれもあらかじめ企図したことなのかもしれない。

 終了後、歌舞伎座そばの中華料理店で検討会名目の呑み会。丸テーブルを囲んで楽しかった。わが左に坐った、IN氏も昨年11月に伴侶を亡くしていて、互いに一周忌法要やらお墓の話などで奇妙に盛り上がった。この人も別なメガバンクの支店長だった。いかにも堅い金融マンという印象は変わらない。からかうダジャレをはす向かいに坐るK氏に投げつけたところ、主宰者S氏から「うまい!」の掛け声あり。この時が昨夕いちばんの喜びであった。