遠藤啄郎さん制作の仮面は別などこかでも楽しんでいるが、主宰する劇団横浜ボートシアターの代表作公演、遠藤啄郎さん演出の仮面劇『小栗判官・照手姫』を、遊行寺ではなく、江東区佐賀町エキジビット・スペースにて1986年10/1に観ている。シアター・トップスで観劇した哲学者の故中村雄二郎氏は、「昔あった小芝居のコッテリした味を仮面によって現代的に受け継いだユニークな劇団だと思った。今多くの現代劇が明確な方法論を失って衰弱してきているなかで、不思議に力のこもった舞台だと思った」と遊行寺公演のパンフレットで書いている。その通りの感想をもった。エキジビットの空間は、はじめからは舞台と客席が分けられていないので、シアタートップス公演の場合よりも、仮面と役者の声が生み出す〈中世説話らしい〉雰囲気が漂っていたかも。
面白い仮面と芝居に感謝して、ご冥福を祈りたい。
(リブロポート発行)
劇団員の中に「吉見俊哉」の名が並んでいるが、メディア論・都市論の社会学者吉見俊哉東大教授その人である。若いころは演劇志望であったらしい。