⦅トランプ氏に似ていると話題のオウゴン君(静岡県掛川市の掛川花鳥園で)⦆
リトアニア生まれの「魔術師としての美術史家」(種村季弘)ユルギス・バルトルシャイティス(Jurgis Baltrušaitis)の四つのエッセイ「アベラシオン(ABERRATIONS)」(『バルトルシャイテス著作集・1』国書刊行会:種村季弘・巌谷國士訳)中の「動物観相学」は、古代ギリシア・ローマの観相学を淵源とし、直接およびイスラームを媒介に中世に再発見され、ルネサンスに蘇生する西洋観相学の系譜を面白く紹介している。
16世紀に刊行され、「並外れた成功をおさめた」ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタの『人間観相学』の記述が、わかりやすく愉しい。ポルタのこの著作によれば、大前提:いかなる動物種にもそのものの諸特性ならびに諸情念に見合う形姿がある。小前提:これらの形姿の諸要素は人間の場合にも見受けられる。結論:そういう顔つきをした人間は、したがってそれに見合った性格の持主である。
……こうして、たくましくて太っ腹であるライオンには強い胸郭と幅ひろい肩と大きな手足とがある。このような特徴を示している人間は勇敢でつよい。動物の形姿のなかでもライオンの体格や各肢部は、人間なら男性の体格にもっともよく似ているが、一方、豹には女性の体型と立ち居振る舞いにいちじるしく見合っている節々がある。しかし他の動物たちもまた私たちにみられるような特徴をみせる。古代以来の思弁の数々が動物界のさまざまな形姿による強迫観念のなかに再帰してくるのである。……(p.21)
具体例: プラトンには、犬の嗅覚のするどい大きな鼻があり、また高くひいでた犬の額がある。ソクラテスは、鹿に喩えられ、そのにぶい鼻は好色な気質を打ち明けている。
(p.22 )
文学の分野では、バルザックが「観相学や(※ガルの)骨相学にいたく関心があった」のであり、「バルザックの描写には観相学的分析がふくまれており、しかもそれは、総じて登場人物を紹介する場合のことである。ときにはその観相学的分析は性格や情念の外的表徴を枚挙しながらえんえんと数頁をこえ、そこに動物たちもあらわれてくる」。