木瓜の花と京都一休寺





 BSプレミアムで、『植物男子ベランダー』(田口トモロヲ主演)のSEASON3が始まった。映画チャンネルNECOで遅れてのSeason1放送の『女くどき飯』(貫地谷しほり主演)とともに、好きなTVドラマ。映画館上映の映画が長篇小説とすれば、この2作品は短篇(集)の佳品といえようか。面白い。どちらのドラマにも安藤玉恵が出演していて、地味ながら存在感が光っている。
 http://www.nhk.or.jp/verandar/(「NHKBSプレミアム『植物男子ベランダー』」)
 http://www.necoweb.com/neco/program/detail.php?id=3525&category_id=4(「映画チャンネルNECO『女くどき飯」)



 『植物男子ベランダー』SEASON3第1話では、木瓜(ぼけ)の花をとり上げていた。花付きが悪そうで、花屋で廉価で売られていた鉢の木瓜が、主人公こだわりの腐葉土の鉢でみごとに開花する話。
 木瓜の花といえば、かつて旅した京都田辺の一休寺を思い出す。たしか方丈庭園を拝観するため入ろうとした玄関の前に咲き誇っていた、紅の木瓜の一群は、印象的であった。詩人栗田勇のことばのフィルターで眺めた庭園の眺望とは違った、思いがけない出会いの記憶が残ったのである。
……名石が艶冶(えんや)なのも、あるいはそこに凝縮されたはげしいものがあるからではないだろうか。ひとつの稠密(ちゅうみつ)な石の肌が生まれるまでに、幾億年という時間のどれほどのおもみが、そしてまた地球の圧力がかかり、あるいは沈黙の水底に肌をみがき、そして、その石を見いだし、愛した人のまなざしが、また情念の息吹が、石の肌を愛撫したことだろう。
 そのときもはや石は自然のものではなく、人間の精神と感覚の生みだした生き物であるといっていい。そのためか、よい石のある寺は、またじつにあでやかなものが多い。
 私の石の寺の遍歴のなかで、いままでふれずにそっととっておいた閑雅な寺がひとつある。たぶん私のいちばん愛着のもてる寺院だといってもいいだろう。
 京都、山城綴喜郡薪村酬恩庵一休寺だ。……⦅栗田勇『石の寺』(淡交新社)p.88⦆

 http://www.ikkyuji.org/(「酬恩庵一休寺」)
 https://readyfor.jp/projects/ikyuji(「存続の危機にある京都一休寺の枯山水庭園を希望の光で照らしたい」)