岸上大作の歌

http://agora-web.jp/archives/1653252.html(「池田信夫:安保反対派の時計は60年安保から止まったまま」)


「60年安保」ということばに触れて、その〈たたかい〉に参加し失恋を契機に自殺した、夭折歌人岸上大作のわが所蔵の歌集を捲ってみた。

意志表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ
幅ひろく見せて連行さるる背がわれの解答もとめてやまぬ
ライターの点かぬまま煙草くわえおり見抜かれながらポーズのひとつ
プラカード持ちしほてりを残す手に汝に伝えん受話器をつかむ
請い願う群れのひとりとして思う姿なきエリート描きしカフカ
面ふせてジグザグにあるその姿勢まなうらながら別れは言えり
 ※まなうら:目の奥。強い印象やはっきりとした残像を映すところとしてのたとえ。…『大辞林
証されているごとき後退ポケットについに投げざりし石くれふたつ
血と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする
遺影への礼なれば問え犠牲死と言いうるほどに果たしたる何
美化されて長き喪の列に訣別のうたひとりとしてきかねばならぬ
⦅写真は、東京台東区下町民家のサンパラソル・ミルキーピンク(商品名:植物名はマンデビラ)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆