福寿草と梅の花—永田耕衣の句



 わが家の庭の福寿草と白梅が花を咲かせた。ようやく春近しとはなったか。歌人永田和宏さんとの「永田」つながりということでもないが、春陽堂俳句文庫の『永田耕衣—自選三百句』をひさしぶりに捲ってみた。

 母の死や枝の先まで梅の花   『驢鳴集』(S27)
 厄介や紅梅の咲き満ちたるは  『吹毛集』(S30)
 母の忌や後ろ向いても梅の花  『吹毛集』(S30)
 母の忌に亡父讃(ほ)めらる梅の花  『悪霊』(S39)
 白梅の余白の余命我に在り    『人生』(S63)
 まれまれに怒り給いき汝(な)白梅  『人生』(S63)
 福寿草泥鰌思いの人に咲く   『人生』(S63)



 父林蔵二月※母りゆう一月に死す    『葱室』(S62)
 最晩年揃いの花見泥鰌かな    『殺佛』(S53)