雨の日は美術書でも—バルテュス

 4/19(土)〜6/22(日)の期間、東京上野の東京都美術館で「バルテュス展」が催されている。ぜひ出向きたいところであるが、まだ膝関節痛が完全には治まっていないので、控えている。
 http://www.tobikan.jp/exhibition/h26_balthus.html(「バルテュス展:東京都美術館」)

 巌谷國士編『澁澤龍彦空想美術館』(平凡社)の、「バルテュス、危険な伝統主義者」を読む。バルテュスの作品は、「トルコ風の部屋」、「トランプをする人たち」、「街路」の油彩3作が載っている。これだけでも愉しい。澁澤龍彦は、バルテュスの世界の特徴を二つ指摘している。なるほど納得させられる。一つは、「外部の現実を利用して、作者自身の内部を表現」しているということだ。一見シュルレアリスム系の作品のような印象や感動を与えるが、バルテュスの作品は、じつは平凡な日常の現実を描いているのである。では作者のどんな内部かといえば、それは「何やら性的な匂いのする、苛立たしい、熱っぽい、陰鬱な、幼年期から青年期に至る過渡期のオブセッション(強迫観念)」である。「このオブセッションが、バルテュスの描く平凡な、ごくありふれた日常的世界の現実にも、つねに微妙に反映しているのである」。
 もう一つの特徴は、「その描かれた人物たちの姿態に見られる、運動感の束の間の欠如であろう」としている。「運動停止と運動開始の予兆」こそが、「あの何ともいえない不安定の感覚、あるいはまた、取りつく島のない、奇妙によそよそしい、一種の疎外感をあたえる、主要な要因でもあろうかと思われる」。
 そして「バルテュス風の色(アントナン・アルトー)」について、「それはオレンジ色や黄色や褐色や青を主調とした、何か暗鬱な、くすんだ、熱っぽさを内に秘めた、曰く言いがたい微妙な色」と澁澤龍彦は述べている。
 5/25(日)のNHKEテレ放送「NHK日曜美術館」で、バルテュスを取りあげていた。バルテュス夫人の節子クロソフスカ・ド・ドーラさんをゲストに招いて、画家人生の各段階を住居およびアトリエごとにまとめて大いに学ばせてもらった。夫人は、生前のバルテュスの煙草の吸殻を灰皿ごと持参して紹介してくれて、二人の関係を想い感動させられた。
 http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2014/0525/index.html(「NHK日曜美術館バルテュス」)
 http://www.nhk.or.jp/nichibi/about/index.html(「NHK日曜美術館とは」)
 http://www.nhk.or.jp/e-tele/(「NHKEテレ」)