アーセン・ベンゲル監督おひさしぶり

 
 昨日7/22(月)は、BS・TBS放送で、名古屋グランパスアーセナルの国際親善試合を観戦した。結果は、1-3の完敗であったが、ひさしぶりにベンゲル流のcollectiveで、早いパス回しのbeautiful footballを堪能させてもらった。アーセン・ベンゲル(Arséne Wenger)監督率いた名古屋グランパスも、その完成形態においてはじつに華麗なパスプレーで試合を支配したものだった。国立競技場での対ジュビロ磐田戦だったかでは、帰路ジュビロのサポーターから「今日はグランパスショーを観せられた試合だったな」と嘆きの声を聞いたのをよく覚えている。ヨーロッパサッカーに精通している解説の中西哲生(元名古屋グランパス所属)さんも、「ベンゲル監督は、名古屋での戦術と変わっていませんよ」と語っていた。第75回「天皇杯」優勝(1996年元旦)のときは、メインスタンド中央の席からベンゲル監督の勇姿がよく眺められた。



 ベンゲル監督の『勝者のエスプリ(L'esprit conquérant)』(NHK出版)の頁をあらためて捲ると、今日まで射程距離の届いた提言および考察を述べているのに驚かされる。例えば、和食の効能に触れながら、
……ことにスペースが限られている現代のサッカーでは、敏捷性、柔軟性、プレーの連係、足の速さといった要素が非常に重要になりつつある。これらのなかで、日本人は敏捷性と柔軟性に優れているが、これも主として食事からくるものではないかと思われる。
 そして日本人はこの特性により、近い将来、ヨーロッパや南米の強敵になるのではないかと私は見ている。
 むしろ日本人にとっては、アジア以外の国々のチームと戦うよりも、アジアの国と対戦することのほうが難しいのかもしれない。それはたとえば対ドイツ戦よりも、対韓国戦で苦労するということだ。同じ特徴を持った人たちと戦うのは、さまざまな点で困難を伴うものだからだ。
   (略)
 もし日本人が相手を力でねじ伏せようとしたらすぐに負けてしまうだろう。したがって日本のサッカーの将来は、力に頼るサッカーではなく、敏捷性と技術力に裏づけられたサッカーをベースに研究されるべきだろう。……(同書pp.114~115)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20130329/1364523393(「ドラガン・ストイコビッチ」)