懐かしい宇能鴻一郎さん

 
 毎回購入しているわけではないが、今週の『週刊現代』の誌面は充実している。読み応え・見応えがあった。『70歳以上に「資産課税」』、『「検査」のウソ・病人はこうして作られる』、『「天才」と呼ばれた人が、本物の「天才」に出会ったとき』など面白かった。「がん研・有明病院の挑戦」の巻頭グラビア記事も勇気を与えられるフォトルポルタージュである。マンガの「サラリーマン専科」は、『週刊現代』みずからを相対化していて傑作、笑ってしまった。「伝説の美少女アイドル・小森愛のヘアヌード」もすてき、感動した。やはりヌード写真(ヘアノミックス)あっての『週刊現代』である。「伝統」を見失ってはならない。

 ところで、巻末写真頁に「グラビア文学館・官能編」がある。今回はその第5回だそうで、宇能鴻一郎さんの小説『水泳教室』を写真で再現したとのこと、撮影・西田幸樹さん、主演のモデルが野乃さん。これがすばらしい。とくに野乃さんの白い肢体はまぶしく輝いている、感嘆そして堪能。


 作家の宇能鴻一郎氏には、昔一度だけお目にかかったことがある。「鯨神」で芥川賞を受賞し、まだ東京大学大学院博士課程に在学中のころで、文京区(現)千駄木の下宿に住んでいた。こちらは高校生で、道灌山下から(現)千駄木への都電通りはよく知っていて、夕方文藝同人誌の同人S君とお宅を急襲した。じつはその前のあるとき街のどこかでお見かけし、無礼にも声をかけたことがあったのだ。当時の高校の国語担当教諭野山嘉正先生(現東京大学名誉教授・近代日本詩歌史)の名を不意に出したところ、「何だお前ら、野山の弟子か」と言われて少し距離が縮まったと勝手に解釈したことであった。
 宇能鴻一郎さんは、なにか原稿執筆中にも関わらず追い返されず、2階の部屋に通してくれたのであった。隣の部屋には布団が敷きっぱなしで、女性が寝息を立てていた。「気にするな、帰ってくれなくて困ってんだ」と豪快に笑ったのが印象的であった。だから、その後売れっ子のポルノ小説家に転じたことも納得できたことであった。

 二人で出している同人誌『風来坊』を差し出すと、すぐに読み始め、わが短篇「赤い坂」を誉めていただいた。このときのはげましは、忘れることがないだろう。野乃さんのヘアヌードに感動しつつ、このときの宇能鴻一郎さんとの稀有な出会いを懐かしく思い出したのである。
 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/kyushu100/2007/01/post_52.shtml
(『九州の100冊:「鯨神」』)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の、ムスカリ。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆