史的イエスは、妻帯者?

The New York Times」によれば、イエスには妻がいたとの、コプト語(Coptic)のパピルス断片が発見され、権威ある学者によって史料としての真正さが認められたそうである。
 http://www.nytimes.com/2012/09/19/us/historian-says-piece-of-papyrus-refers-to-jesus-wife.html?ref=jesuschrist(「The New York Times 」)
 A historian of early Christianity at Harvard Divinity School has identified a scrap of papyrus that she says was written in Coptic in the fourth century and contains a phrase never seen in any piece of Scripture: “Jesus said to them, ‘My wife ...’ ”  
 The faded papyrus fragment is smaller than a business card, with eight lines on one side, in black ink legible under a magnifying glass. Just below the line about Jesus having a wife, the papyrus includes a second provocative clause that purportedly says, “she will be able to be my disciple.”

 http://asahiculture-gaikokugo.com/coptic.html(「コプト語」)
 http://d.hatena.ne.jp/language_and_engineering/20111119/p1(「コプト語学習のための入門用リンク集」) 
 何年か前の『ユダの福音書』発見のとき以上の「大事件」なのかどうか、キリスト教の外部の人間にはまったくわからない。妻(Wife)であり、弟子・「使徒」(Disciple)になっていたかもしれぬ女性が実在していたとすると、教会の権威が失墜するのかどうなのか。
 加藤隆千葉大学教授の『新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか』(大修館書店)によれば、「イエスは自分の言葉や行動を書き残そうとは考えず、自分でもそのようなことは行わなかったし、弟子たちなどにもそうするようにと命じなかったのである」。したがって、今回のパピルス断片も、“Jesus said to them, ‘My wife ...’ ” という一つの証言記録であって、決定的証拠とは到底断定できないのではないか。
……史的イエスについて結局のところ確実に言い得るのは、当時イエスという者が存在して社会宗教的運動を行ったこと、彼の運動がある程度の影響力をもったらしいこと、彼自身は十字架刑に処されたこと、といった程度であって、これ以上に詳しいことは、歴史的には確定できないというのが百年以上にわたる「イエス伝研究」の結論であった。イエスの生涯の歴史的な細部について確定しようとする目的の観点からは、「イエス伝研究」の努力は失敗に終わったことになる。……(同書p.170) 

ユダの福音書を追え

ユダの福音書を追え

原典 ユダの福音書

原典 ユダの福音書

新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか

新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町でみずからの針路を見失ったツマグロヒョウモン(♀)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆