春風亭昇太独演会(09年8月)

 朝のNTV「ぶらり途中下車の旅」は、だいたい観ている。本日は、「旅人」が俳優の石丸謙二郎さんで、都営新宿線の「途中下車」だった。京王線相互乗り入れ利用で、馬喰横山駅から利用することが多い電車ということもあって、〈気合い〉を入れて観ていたところ、小川町下車の街に「藤原ネーム」というネーム刺繍の店があり、石丸さん立ち寄る。ここのご主人ユニークだが、それはそれとして、店に寄席文字の札がぶら下がっているのが眼についた。一つが「春風亭昇太」と書かれてある。
  http://www.ntv.co.jp/burari/contents/detail_2681186.html(「ぶらり途中下車の旅:藤原ネーム」)
 2年前新宿で「春風亭昇太独演会」を聴いたことが思い出される。HP記載の鑑賞記を再録したい。


◆昨晩8/19は、新宿「紀伊国屋サザンシアター」にて、「春風亭昇太独演会・オレスタイル」を鑑賞。女性客が多く、華やいだ雰囲気もあり、愉快な一晩を過ごせた。春風亭昇太師匠は、「所詮落語は落語」とのわりきりかたを前提にして、さまざまなジャンルへのアンテナを張りつつ、きちんと古典をこなそうとしている。その芸人としての姿勢に好感がもてる。日本では、何でも「〜道」になってしまい、「修業」が「修行」となり、「神」をつくりたがる。もっと肩の力を抜いて楽しんだほうがよかろう。
「蕎麦の喰い方で、芸が評価されるようなら、落語は現代パントマイムにかないませんよ」と、まくらでさらりと語りながら、2席目の「そば清」で、ちゃんと蕎麦を食べるところをみごとに演じている。志ん生のは、蕎麦を食べるところはまったく見せなかったそうだが、昇太師匠のは、食べるところを見せて、清さんの「狂気」のようなものが窺えて面白かった。
 1席目の「看板のピン」は、柳家小さん風で、(親分ではなく)隠居の元博打打ちが壷を振り、それを真似たおっちょこちょいが大損をする噺で、おっちょこちょいを演じるには、昇太師匠の風貌はうってつけだ。同系列の「時そば」もきっと面白いだろう。
 3席目の「宿屋の仇討ち」も、よいリズムで演じられ、「イハチー、イハチー」の武士の呼び声のところも「物語の良いクッションになり、噺のいやらしさを消してくれる」(立川志らく師匠)効果がしっかり出ていた。これを得意とするらしい柳家小三治師匠の高座は、いつか聴きたいものだ。(※演目は違うが、この翌年小三治師匠の独演会を聴いている。)落ちのところで照れくさそうな表情を一瞬見せたのは、師匠の批評意識からくるのであろうか。
 ゲストの立川生志の「反対俥」も面白かった。師匠、「後腹膜(良性)腫瘍」という重い病気で入院していたそうで、高座では、その体験までも面白おかしくまくらのネタにしていて、抱腹絶倒笑わされた。「反対俥」では、腹のあたりからつくりものの〈腸〉まで出して、「あら芸風が変わってしまったか」などととぼけてサービス、笑えた。上方落語の大作「地獄八景亡者戯」に挑戦したらしい。立川流には、異才が多い。最後には、特別ゲストで立川談春師匠までも駆けつけ、生志師匠の着物を借りて登場、楽しかった。今度はぜひ「庖丁」を聴きたいものだ。(2009年8/20記)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のコリウス—花と葉。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆