キャンティワインとシャブリワイン

 
 昨日9/24(土)は、イオン津田沼店内の「KALDI」にて、ワインを3本購入。キャンティChianti)の「ドン・アンジェロ(Don Angelo)」、シャブリ(Chablis )の「ジャン・ラフィット(Jean Lafitte)」それに、カリフォルニアワインの「レッドウッド・シャルドネ(Redwood Chardonnay)」。3本で2876円という安さ。「Redwood」は、昨日冷やして賞味。コクはないが、まずまずか。本日は、休肝日。シャブリは、ソムリエKimiさんもコストパフォーマンスよしと推奨しているので、愉しみである。
    http://plaza.rakuten.co.jp/kimi0730/diary/201109160001/(「ソムリエKimiのブログ」)


 晩年の室生犀星に師事した笠原三津子の詩集『旅』(羊皮の表紙・限定20部・1967年風社刊)に、「食卓」と題された詩がある。

  キャンティ
 ルビー色にきらめく
 二つのグラスが
 一つに重なったとき
 宝物を包んだ二つの顔が
 見えない鎖をからみ合わせる

 ミカンの皮を裂くように
 男の胸を切り開いて見ると
 愛のかたちが
 ババロアのように鎮座している


 山本博氏の『ワインが語るフランスの歴史』(白水社)は、まるで芳醇なワインそのもののように味わい深い。山本博氏は、世界ソムリエ.コンクールの日本代表審査委員を務める。この書でフランスワインを、フランスの歴史のエピソードとからませて、実に興味深く語っている。古代ギリシアの植民市であったマルセイユの港に、同じくギリシアの植民市であった現在のトルコあたりのフォカイアからやってきた人たちが、紀元前600年頃このマルセイユをつくりギリシアのワインを伝えたらしい。当時のガリアは森林に覆われていたが、後に、ローマ軍は、森を伐採しぶどう畑を造成していった。カエサルの軍隊は肉食はせず、兵士たちにエンドウ豆、レンズ豆、エジプト豆を食べさせるとともに、ガリアの水の悪さを忘れることなく、兵士たちにワインを用意したのだ。
『数百年続いた「ローマの平和」のなかで、ガリア人たちはローマ風な文化生活になじみ、楽しむようになってきた。よく実をつけるぶどうの栽培が可能となると、ガリア人たちのワインへの打ちこみかたは大したもので、人々は熱狂的に競ってぶどう畑をつくった。ワイン・ブームに乗って、麦畑をつぶしてぶどう畑にすることも多かった。』
 「フランスが世界に誇るブルゴーニュの辛口白ワイン」のシャブリワインは、当時ヨーロッパを横断する重要な通路の中継地であったヴィクスの村のすぐ近くのシャブリが産するワインである。19世紀の後半に、北部ブルゴーニュは、フィロキセラ(ぶどう根アブラ虫)に襲われ、多くがぶどうを見かぎって他の果樹や農作物に転向した。しかしシャブリだけが、困苦奮闘してその危機を乗り切った。冬は寒い北部に位置するシャブリでは、晩霜の襲いそうな春の夜、提灯行列のようにストーブを並べて樹を守るのだそうだ。ひとつの文化が維持されるには、知られざる悲哀と努力があることを知らされた。シャブリワインの独特の味は、この地方の白亜質石灰岩系の土壌で育てられたシャルドネ種のぶどうに起因するそうだ。さらに製法にも歴史がある。
 現在のハンガリー出身の、聖マルタンがぶどうの守護聖人として崇められるロワール河流域のトゥールはかつて、ぶどうの剪定(せんてい)の創始者としての聖マルタン伝説とともに、秀逸なワインの生産地であったが、ノルマン人の侵攻により衰退し、そこから逃げた修道僧たちがシャブリに技術をもたらしたのだという。
 シャブリワインの歴史に思いを馳せつつ呑みたいものである。

ワインが語るフランスの歴史 (白水uブックス)

ワインが語るフランスの歴史 (白水uブックス)


【お知らせ】好評の小川匡夫カメラマンの花の写真は、氏の写真処理PC故障修理中のため休載。これのみを愉しみとするひとは、しばし待たれたし。