銀座と浅草

 この数日の間に、いま新しい顔を伴って注目されている東京の街、銀座と浅草を散策した.活気というより熱気が溢れていて、楽しい時間を過ごせた.下町界隈の路地裏にも味わい深い「東京」がある。鈴木博之氏が指示する「ゲニウス・ロキ(地霊の力)」の存在は信じられる.
『都市には確かにゲニウス・ロキがある。東京には平将門の怨霊が漂っているというのもそうなら、山の手と下町という区分にもどこかしらゲニウス・ロキの概念がまとわりついているし、赤坂・青山・西麻布といった地名にも、西田佐知子以来新しいゲニウス・ロキが現れている.』(鈴木博之『都市のかなしみ』中央公論新社
 しかしただ伝統になるものの上に胡座をかいていても、衰退を待つばかりとなろう.他のアジアの巨大都市を見据えた、観光都市「東京」としての破壊と創造は、あるところでは必要である。
 10/7(木)は、銀座を歩いた.目的は、連れ合いの腕時計の電池の入れ替えだ。4丁目交差点近くの天賞堂地下に行った.江戸川乱歩の小説に出て来たような店名である。点検を含めて時間を要するとのことで、ぶらつくことにした.松坂屋の裏通りのビルにある、ヴァニラ画廊をひさしぶりに覗いてみた.知る人ぞ知る、エロティックアートのGALLERYだ。五寸釘寅吉という人の個展開催中.児童ポルノ法違反で執行猶予中だそうで、油彩の作品が狭い画廊の壁に隙間なく展示してあった.落語家でもあるそうな、着流しの寅吉氏と面談しているミニスカートの少女のほうが、気になった個展であった.
 新装オープンの三越地下で、洋のスイーツをCAJUで、和のスイーツを鶴屋吉信で購入.手土産用だ.千疋屋( GINZA SEMBIKIYA)パーラーで、フルーツクリームをいただいてから、再び天賞堂地下へ.再生した腕時計が美人店員から手渡された.
  http://www.vanilla-gallery.com/

 10/10(日)に、手土産持参で実家を訪問.正面のお寺が曹洞宗祝言寺で、ここの住職に嫁いで来た方は、浅草仲見世通りの玩具店トイス・テラオ」のお嬢様だ.「トイス・テラオ」のご主人は、都立上野高校で先輩の同僚であった.その隣のお寺は浄土真宗東本願寺派の皆応寺。映画監督・俳優の奥田瑛二氏のご令室(和津さま)の母君の墓所があり、今年の正月、奥田瑛二氏が、お嬢様お二人(安藤モモ子さん・安藤サクラさん)を連れて墓参に訪れていたのを目撃.
  http://www.aitaii.com/shigei/taitouku/asakusanisi/asakusanisi.html(音楽は余計)
 そんな縁(?)もあり安藤モモ子監督の映画『カケラ』のDVDをAmazon.co.ukに注文した.女優満島ひかりにも大いに関心がある.Amazon.co.jpでも年内には発売されるそうである.

カケラ [DVD]

カケラ [DVD]

 夜の浅草は、信じられないほどの賑わいであった.かつては8時には店は閉まり、閑散としていた仲見世通りも、ライトアップし、改装なった浅草寺本堂のご威光か、ぶつからずには歩けない人混み.お参り後「トイス・テラオ」を覗くと、なんとかつての数学教師、寺尾老人がレジで仕事をしている最中.中に入り、しばし久闊を叙することとなった.感動的な一晩の散策であった.
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の上コムラサキ、下桔梗。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆